最新記事

中国

香港行政長官、デモ対策に「逃亡犯条例撤回」を提案するも中国政府が拒否

2019年8月30日(金)18時00分

複数の関係筋によると、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真)は今年夏、抗議デモの参加者が掲げる「5大要求」について検討した報告書を中国政府に提出し、「逃亡犯条例」改正案を撤回すれば抗議デモの鎮静化につながる可能性があるとの見解を示した。香港で27日撮影(2019年 ロイター/KAI PFAFFENBACH)

複数の関係筋によると、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は今年夏、抗議デモの参加者が掲げる「5大要求」について検討した報告書を中国政府に提出し、「逃亡犯条例」改正案を撤回すれば抗議デモの鎮静化につながる可能性があるとの見解を示した。

ただ、中国の中央政府は、改正案の撤回に関する同長官の提案を拒否。5大要求の他の項目についても、要求に応じるべきではないとの見解を示した。

中国政府が抗議デモへの対応で香港政府に指示を出していることは広く予想されていたが、その実態が明らかになった格好だ。

デモ参加者が掲げる5大要求は、改正案の撤回、抗議デモに関して調査する独立委員会の設置、完全に民主的な選挙の実現、抗議を暴動とした認定の取り消し、抗議者の逮捕取り下げ。

香港政府高官が匿名を条件に明らかにしたところによると、改正案の撤回と独立委員会の設置は政治的に最も実現可能で、一部の穏健なデモ参加者の不満を和らげるのに寄与するとみられていたが、中国政府はこうした要求に応じないよう同長官に指示したという。

中国政府高官によると、林鄭長官が報告書を提出したのは、中国政府のハイレベル機関「中央香港マカオ工作協調小組」。同組織のトップは共産党中央政治局常務委員会の韓正委員が務めており、習近平国家主席も報告書の存在を知っているという。

林鄭長官の事務所は、ロイターの取材に対し、抗議者の懸念に対応するため努力していると表明。報告書を中国政府に提出したかどうかや、中国政府から指示を受けているかには直接コメントしなかった。

中国外務省は、ロイターの取材に対し、国務院香港マカオ事務弁公室に問い合わせるべきだとコメント。ロイターは香港マカオ事務弁公室にファクスでコメントを求めたが、返答はない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スーダンの準軍事組織RSFが休戦表明 国軍は拒否

ワールド

銅相場は堅調、供給動向と米在庫を注視

ビジネス

米当局、コムキャストに罰金150万ドル 23万人超

ビジネス

赤沢経産相、ラピダス「国策として全力で取り組む」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中