最新記事

昆虫

世界各地を襲う昆虫の大群 気象レーダーが捉える

2019年7月30日(火)20時44分
松岡由希子

<昆虫の大群が気象レーダーでとらえられるという事象が、このところ相次いでいる......>

昆虫の大群が気象レーダーでとらえられるという事象が、このところ相次いでいる。アメリカ国立気象局(NWS)ラスベガス気象予報事務所は、2019年7月27日、公式ツイッターアカウントを通じ、米ネバダ州ラスベガス上空で飛翔生物が気象レーダーに反射している様子を公開した。

バッタの大群に襲われるラスベガス

これらの多くは、アメリカ大陸の砂漠地帯で広く生息するトノサマバッタ亜科のパリッドウイングドグラスホッパーとみられている。

同時期には、ラスベガスのいたるところで、このバッタの大群が目撃されている。ラスベガスのカジノホテル「フラミンゴ・ラスベガス」の舞台で公演するコメディアンのナンシー・ライアンさんは、ホテルの外の照明に群がる大量のバッタを映した動画をツイッターに投稿している。

ネバダ州農務局の昆虫学者ジェフ・ナイツ氏が米CNNの取材に答えたところによると、このバッタは冬や春に雨が多いと個体数が増える傾向にあるという。ネバダ州では、2019年1月から5月までの降水量が年平均降水量の約2倍にのぼっており、個体群密度を緩和するためにこれらの大群が移動してきたのではないかとみている。

ロサンゼルス東郊の砂漠地帯を南下するてんとう虫の大群

2019年6月5日には、アメリカ国立気象局(NWS)サンディエゴ気象予報事務所の気象レーダーが、ロサンゼルス東郊の砂漠地帯サンバーナーディーノ上空を南下するてんとう虫の大群をとらえた。

サンディエゴ気象予報事務所の気象学者ケイシー・オズワント氏は、米公共ラジオ局(NPR)の取材に対し、「その日は概ね晴れで、雨や雷を予想していなかったので、非常に奇妙だった」と振り返る。気象レーダーでは、雨粒大の物体が大量に現れているにもかかわらず、実際、雨は降っていなかった。現地の気象予報士に確認し、その正体がてんとう虫の大群であることがわかったという。

イングランド南部を移動する羽アリの大群

英イングランド南部でも、2019年7月17日、雨粒ではない物体がイギリス気象庁の気象レーダーでとらえられた。羽アリの大群とみられている。

英BBCで気象キャスターを務める気象予報士のサイモン・キング氏は、「イングランド南部は晴れていたにもかかわらず、気象レーダーがわずかな降水を示した。通常の降雨に見られるものとは一致しないことから、降雨ではないと考えられる」と分析。「羽アリは雲底に向かって一定の高さで大気中を飛翔することから、その多くを気象レーダーがとらえてしまったのだろう」とみている。

昆虫の大群が気象レーダーに反応することで、天気予報に大きな影響が出ないことを望みたい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中