最新記事

北朝鮮

北朝鮮の新造潜水艦は新たな脅威なのか

2019年7月30日(火)18時30分
ジェームズ・パターソン

新たに建造された潜水艦を視察する金正恩 KCNAーREUTERS

<既存の潜水艦に搭載できる弾道ミサイルは1基のみだったが、新潜水艦では4基可能に>

北朝鮮の国営朝鮮中央通信は7月23日、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が新たに建造された潜水艦を視察したと写真付きで報じた。自身の「綿密な指導と特別な関心」の下で建造された潜水艦に、金は「大いに満足」したという。

金は新しい潜水艦を「国防上の重要な要素」と呼び、「潜水艦のような海洋兵器の開発に大きな努力を傾けることで、国防能力を確実に向上させる」必要があると強調した。

この新潜水艦について、16年に存在が確認された新浦(シンポ)C級の後継艦ではないかとの指摘もある。全米科学者連盟のフェロー、アンキット・パンダはワシントン・ポスト紙にこう語った。「アメリカの情報当局が新浦C級と呼ぶ潜水艦か、従来の新浦級の弾道ミサイル搭載艦より大型の後継艦を初めて捉えた画像だと思う。この潜水艦は新浦級よりもずっと大きい。最大4基の弾道ミサイルを搭載できる可能性がある」

「一部の推測とは違い、北朝鮮の水中核戦力プログラムが極めて現実的な存在であることが確認できた」と、パンダは付け加えた。北朝鮮が現在保有する潜水艦は、搭載可能な弾道ミサイルが1基だけ。それを考えれば、飛躍的な進歩を遂げていることは明らかだ。

ジェームズ・マーティン不拡散研究センターの上級研究員デーブ・シュメラーら専門家は、新しい潜水艦は現在の北朝鮮の潜水艦の欠点を補うため、最近になって再び活発に稼働し始めた東部・新浦の造船所で建造されたものである可能性が高いと口をそろえる。

「現在の北朝鮮(の弾道ミサイル搭載艦)は恐ろしく非効率な実験艦で、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を1発しか発射できない。もっと多くのミサイルを搭載可能な潜水艦を新たに建造することは、ごく自然な動きだ」

北朝鮮の潜水艦は老朽艦ばかり、と思っていたら痛い目に遭うかもしれない。

<本誌2019年8月6日号掲載>

20190806issue_cover200.jpg
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。


ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身も認める「大きな胸」解放にファン歓喜 哺乳瓶で際どいショットも
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中