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日本社会

家はタダで借りる時代──「0円借家」は実際にある

2019年6月5日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

全国の借家の2%、約37万9700戸が実は0円の借家 xeni4ka/iStock.

<全国で空き家が増えていくなかで、タダで借りられる借家も今後増えることが予想される>

日本社会の近未来については色々な予測がある。人口減少、労働力不足の深刻化、老後の社会保障の崩壊......。気が滅入ることばかりだが、明るい話もある。黙っていても「家が空から降ってくるようになる」ことだ。

堀江貴文氏は、最近の著書で次のように述べている。「家賃は要らないから、空き家に住んでハウスキーパーをやってほしいと懇願される時代がやってくる」(『疑う力』宝島社、2019年)。この先、住める家が余りまくる時代に、先行き不透明ななかでローンを組んでマイホームを買うのはナンセンスという話だ。

確かに空き家は増えている。家と言うのは、人が住まないと荒む。朽ち果てて景観が悪くなったり、犯罪の温床になったりする。本当に「タダでいいから、空き家に住んでください」と言われる時代が来るかもしれない。

実は今でも、タダで借りられる家は存在する。2013年の総務省『住宅土地統計』によると、家賃が0円の借家に住む世帯は35万9700世帯もあった。借家世帯全体に占める割合にすると2.0%だ。この比率には地域差もある。47都道府県の0円借家率を高い順に並べると、<表1>のようになる。

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上位3位は岩手県、福島県、宮城県だ。これら3県では、借家の1割が0円借家となっている。2011年の東日本大震災の影響だろう。南端の沖縄県も3.2%で比較的高い。筆者の郷里の鹿児島県も高い比率だ(2.7%)。人口減に悩む離島部が、空き家を貸し出しているのだろうか。なお、0円借家の6割は民営借家だ。

市区町村レベルで見ると、佐賀県の基山町では3割、島根県の隠岐の島では2割が0円借家となっている。こういう情報を地方創生の資料に載せるといいだろう。人の移動を促すのに役立つ。2013年では0円借家は約36万戸だが、間もなく公開される2018年データではもっと増えていると予想される。50万戸を超えているかもしれない。

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