最新記事

台湾

トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い

2019年5月6日(月)12時30分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

この流れから行けば、郭氏は再度トランプ大統領に会いに行くだろうと予測し、動静を見守ることにして、郭氏の次期総統選出馬声明に関して何も書かなかった。

台湾の民意調査では「平和統一反対」84%

静観を決めた背景には、もう一つの要素があった。

それは今年1月6日付のコラム<「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話>で書いたように、今年1月2日、習近平は「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し(以下、「今年の講話」)、2020年の台湾総統選に向けて二つの「脅し」を「台湾同胞」に向けて発しているからだ。

1992年に中台間で認識を共有した「九二コンセンサス」にはあったが、今年の講話では削除されるか変更されている重要な個所を二つ列挙する。

1.「九二コンセンサス」には「一中各表」という表現があったが、今年の講話では、この4文字が削除されている。「一中各表」とは、「一つの中国」は中台双方のコンセンサスとして認識するが、その「中国」が「中華人民共和国」を意味するのか、それとも「中華民国」を意味するのかに関しては、「中台各自が解釈する」という意味である。

2.「九二コンセンサス」は、中台が平等に「共通認識(コンセンサス)」を持つことが基本軸にあったが、今年の講話では、「九二コンセンサス」がいつの間にか「一国二制度」と同じ位置づけになっている。つまり台湾は「中華人民共和国」という国家に所属し、香港やマカオと同じ特別行政区として、形式上「社会主義と民主主義の二つの制度」を実施するという「一国二制度」の形に置き換えられている。

これらに対する台湾の両岸政策協会による民意調査の結果が、今年1月3日に発表されたが、84.1%が習近平の今年の講話による「平和統一」概念に反対しているという結果が出た。平和統一を目指す「九二コンセンサス」は「一つの中国(=中華人民共和国)原則」でしかなく、到底受け入れることはできないというのが台湾国民の意思表示だった。

どんなに経済が重要であっても、国家の尊厳を捨てることはできないという結果が出たのである。

たしかに民進党は下降線をたどっているが、国民党の第一候補とみなされてきた高雄市の韓国瑜(かん・こくゆ)市長の支持率34.2%に比べて、郭氏の支持率は16.3%と低い(4月30日時点)。

調査母体によって支持率の値は異なるものの、このままでは郭氏の総統当選はおぼつかない。出馬するからには絶対に当選しなければならないのが、「郭台銘会長」の立場だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏のガザ和平案、8カ月でハマス武装解除・地

ワールド

米上院、国土安全保障省への資金法案可決 ICEは除

ワールド

中国、米通商慣行の対抗調査開始 即時の報復回避

ワールド

台湾、電気料金値上げ見送り 中東紛争でも物価安定優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中