最新記事

フランス

「歴史が煙と消えた......」 ノートルダム火災で悲嘆にくれるパリ市民

2019年4月16日(火)16時26分

15日、仏パリのノートルダム寺院で大規模な火災が発生。世界的に愛されている歴史的建造物の大聖堂から巨大な炎が上がり、取り乱したパリっ子や、ショックを受けた観光客らは信じられない面持ちでその状況を見守った。ノートルダム寺院の火災を見つめる市民ら(2019年 ロイター/Charles Platiau)

仏パリのノートルダム寺院で15日、大規模な火災が発生。世界的に愛されている歴史的建造物の大聖堂から巨大な炎が上がり、取り乱したパリっ子や、ショックを受けた観光客らは信じられない面持ちでその状況を見守った。

大聖堂の屋根が崩壊する中、警察が現場付近への立ち入りを規制したため、数千人の市民や観光客らはセーヌ川に架かる橋や堤防の上に集まった。

「打ちのめされている」と、近くに住むエリザベト・カイユさん(58)と悲嘆にくれる。「(ノートルダム寺院は)パリの象徴。キリスト教の象徴だ。世界全体が崩壊しているようだ」

夜が訪れると、12世紀に建造が始まったゴシック様式の大聖堂の中心部から上がるオレンジ色の炎が、ステンドグラスの窓を通して不気味な光となり、石造りの鐘楼を照らした。

つんとした匂いのする煙が空に立ち上る中で、ショックを受けた人々は口もきけずにただ立ち尽くしていた。被害の大きさを理解するにつれ、大聖堂がその夜を持ちこたえられるかどうか考えているようだった。明らかに動揺した様子の人もいた。

「もう2度と同じにはならない」と、サマンサ・シルバさん(30)は目に涙を浮かべて語った。外国から友人が訪れるたびに、必ずこの寺院を見せに連れてきたという。

1163年に建設が始まり、1世紀以上かけて完成されたノートルダム寺院は2013年に850周年を迎えており、フランスのゴシック建築を代表する建造物と歴史家に評価されている。

同寺院には、16世紀の宗教改革で起きたプロテスタント(ユグノー)信者による収奪行為を乗り切り、1790年代のフランス革命期の略奪にも耐え、その後、ほぼ放置され荒廃した状況から立ち直った過去がある。作家ビクトル・ユーゴーが1831年に出版した「ノートルダム・ド・パリ」で同寺院への関心が改めて高まり、1844年から大規模な修繕工事が行われた。

フランスでは現在も、同寺院が国葬の場として使われている。ドゴール元大統領やミッテラン元大統領の追悼式には、世界の指導者が参列した。

「ひどいことだ。800年の歴史が煙と消えてしまった」と、ドイツからの観光客カトリン・レッケさんは嘆いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、プラ・繊維系石化製品の過剰生産能力解消へ会合

ワールド

インド、金融セクター改革を強化 170億ドルの資金

ワールド

全米で約7000便が遅延、管制官の欠勤急増 政府閉

ビジネス

鴻海精密工業、AIコンピューティング関連装置調達で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中