最新記事

オピニオン

国際秩序を脅かすアサンジは法で裁かれるべきだ

Julian Assange: A Life Above the Rule of Law

2019年4月15日(月)18時00分
トッド・ローゼンブルーム(米アトランティック・カウンシル上級研究員)

アサンジは法より自分が正しいと信じ込んできた(ロンドンの在英エクアドル大使館のバルコニーで。2017年5月19日) Peter Nicholls-REUTERS

<「透明性」の名目の下に、法を無視し、ロシアの協力者となったアサンジは民主的秩序の敵として法で裁かれるべきだ>

4月11日にロンドンで「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジが逮捕されたことは、「法の支配」の勝利だ。誰かが、気に入らない政府や個人を「崇高な」イデオロギーと「透明性」の名の下にさらそうとするとき、アサンジもその同類たちも、恩恵よりはるかに大きな災厄をもたらしてきた。

個人、企業、そして政府には、デジタル時代のルールと法律の範囲内で活動を営む権利がある。それ以外の活動は犯罪か、スパイ活動、または情報戦争だ。個人であろうと国家であろうと、保護されるべき機密情報を尊重することは、社会を機能させる上で不可欠だ。誰のデータが尊重に値するか否かを決めるのが自分の使命と思い込んだ人間は、誰にとっても危険な存在となる。次に誰が標的になるか、わかったものではない。

国際的な情報の暴露によって不正が明るみに出る。だから目的は手段を正当化する、とアサンジは信じ始めていたかもしれない。彼がどこから始めたにせよ、彼は、ロシア政府と共謀して2016年の米大統領選挙で不正を行った容疑者として裁判官の前に立たされる身だ。

ロシアの手先として法廷に

アメリカのイラク介入とアフガニスタンでのタリバンの追放に反対する多くの人々の仲間としてアサンジは活動を開始したのかもしれない。だが、彼が法廷に引き出されるのは、米軍人を危険にさらす試みに手を貸し、アメリカの最も高性能な情報通信収集ツールを暴露し(だがロシアには同じことはやらず)、世界中からアメリカの外交的地位を損なうために活動する人間とみられているからだ。

彼は、西側、ヨーロッパ、民主主義、法の支配、そしてアメリカの敵対者として、またロシアの仲間で手先だという疑いの下、裁判官の前に立つ。

エクアドル政府がなぜ、アサンジに与えた外交特権を剥奪しイギリスの法執行機関に引き渡すことに同意したのか、国際社会が具体的にどんな動きをしたのか、詳しいことはまだわかっていない。

わかっているのは、アサンジをロンドンのエクアドル大使館に匿うという2012年の決定をエクアドルが覆したがっていたこと、複数の国がアサンジを裁判にかけるために正式な引き渡し要求を提出し、国際法執行および外交面での協力を進めたことが、この結末を可能にしたということだ(アサンジがやった一方的な行為を考えれば、イギリス政府は軍隊の力でエクアドル大使館を制圧することもできたのだが)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が無人機試験視察、AIによる強化を命令=朝

ワールド

全国CPI、8月は前年比+2.7%に鈍化 市場予想

ワールド

仏で財政緊縮巡りデモ・スト、100万人参加と労組 

ワールド

国連安保理、ガザ停戦決議を否決 米が6回目の拒否権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中