最新記事

選挙

トルコ地方選、エルドアン大統領の与党が首都で敗北 イスタンブールもリード許す

2019年4月2日(火)07時00分

トルコで投開票された統一地方選は、エルドアン大統領が率いる国政与党の公正発展党(AKP)が首都アンカラの市長ポストを明け渡した。写真はアンカラで4月撮影(2019年 ロイター/Umit Bektas)

トルコで3月31日に投開票された統一地方選は、エルドアン大統領が率いる国政与党の公正発展党(AKP)が首都アンカラの市長選で敗北に追い込まれたほか、最大都市イスタンブールの市長選でも劣勢となった。

開票作業が進む中、トルコリラは対ドルで当初下落していたものの、その後は値上がりに転じた。直近では1.4%高の5.48リラ。「AKPにはもっと悪い結果になってもおかしくなかったとの見方から買い戻しが入った。自由な市場を尊重するとのエルドアン大統領発言も材料になった」(ウニクレディト)という。株価も値上がりした。

トルコメディアによると、アンカラ市長選では野党・共和人民党(CHP)の候補がAKPの候補に圧勝した。AKPがアンカラで市長ポストを失うのは2001年の結党以来始めて。またイスタンブール市長選でもCHPの候補がAKPの候補に約2万5000票の差をつけてリードしている。

CHPのクルチダルオール党首は「国民は民主主義を選んだ」と述べ、同党の候補がアンカラとイスタンブールの市長ポストをAKPから奪取し、第3の都市イズミールでも市長ポストを守ったと宣言した。

国営アナトリア通信によると、全国の投票率は84.52%と非常に高かった。

AKPが2大都市で敗北すれば25年ぶりとなる。エルドアン大統領は今回の選挙を「トルコの存続にかかわる」として2カ月にわたり精力的に選挙運動を展開したが、景気低迷がAKPに逆風となった。エルドアン大統領にとってアンカラでのAKPの敗北は大きな痛手であり、自身が1990年代に市長を務めたイスタンブールでも敗れれば、より広範囲での支持後退が浮き彫りになる。

エルドアン大統領はアンカラで支持者を前に行った演説で、イスタンブール市長選での党の敗北を認めたと受け取れる発言をする一方、同市の大半の地区はAKPが維持したとも強調。「市民は市長のポストを明け渡したとしても、地区に関してはAKPに託した」と述べた。また、必要であれば開票結果に異議を申し立てるとの考えを示した。

大統領は記者団に対し、今後は2023年の国政選挙に向けて経済改革に注力すると表明。「自由市場経済のルールに関して妥協することなく経済改革を実行する長い期間がこの先ある」と述べた。

トルコでは昨年の通貨危機でリラが30%下落し、景気が悪化。インフレ率が20%近くに達し、失業率も上昇する中、有権者の間で不満が高まっている。

著名ジャーナリストのルーセン・チャキール氏はツイッターで今回の選挙について、エルドアン氏がイスタンブール市長に当選した1994年の選挙以来の歴史的な結果だと投稿。「25年前に開かれたページがめくられようとしている」と評した。

政治リスクアドバイザー「テネオ」の共同プレジデント、ウォルファンゴ・ピッコリ氏は、イスタンブールを除いた場合でもAKPは主要12都市のうち7都市で敗北したと指摘し、「AKPは全ての主要経済拠点で非常に悪い結果となった。親ビジネスと自称する党にとっては大きな問題だ」と述べた。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中