最新記事

フィリピン

比ドゥテルテ大統領、麻薬汚染政治家リスト公表を予告 「外国政府の盗聴利用」が二転三転、反発広がる

2019年3月7日(木)19時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

麻薬汚染政治家を公表するというドゥテルテ大統領。写真は国家警察の幹部に麻薬取引に関与した容疑者のリストを見せるドゥテルテ大統領。Romeo Ranoco / REUTERS

<麻薬犯罪対策のためなら「超法規的殺人」もいとわぬ大統領が、今度は汚れた政治家たちの名を公表すると息巻いているが......>

フィリピンのドゥテルテ大統領が最優先課題として厳しい姿勢で臨んでいる麻薬関連犯罪対策の一環として3月5日に麻薬汚染疑惑のある政治家のブラックリストを近く公表する方針を明らかにした。

ところがこの公表方針に関して国会議員などから猛烈な反対、抗議が沸きあがり、政府が対応に躍起となっている。それというのも、政府が「この麻薬汚染政治家リストは、外国政府による電話の盗聴記録に基づくものである」としたことから「外国政府の提供した情報に妥当性がない」「盗聴記録を証拠するのはフィリピンの法律違反である」などという激しい反発を招いているのだ。

ドゥテルテ大統領自身はそうした「雑音」に耳を貸すつもりはなく、早ければ3月11日の週にもリストを公表する方針を崩していないが、大統領府、政府と議員などの間でこのブラックリスト問題は白熱化している。

3月5日にエドアルド・アニョ内務・地方自治相は「大統領は政治家リストを近く公表する」としたうえで、リストには政治家82人の名前が記載されていることを明らかにした。その多くは5月の総選挙に立候補している地方政府関係者というが、アニョ内務・地方自治相は「有権者に対して違法麻薬を擁護するような立場の候補者を(投票で)選ばないためにもリストの実名を公表することは必要だ」と大統領の方針を擁護する発言をしたことを地元紙「インクワイアラー」などが一斉に報じた。

情報提供元は米ロ中イスラエルの4カ国

大統領府のサルバドール・パネロ報道官兼法律顧問は「フィリピンの政治家による違法麻薬取引に関する情報を外国政府による電話の盗聴記録から提供を受けた」ことを明らかにし、関連する外国政府として「米国、ロシア、中国とイスラエル」と具体的な国名を挙げた。

こうした政府の方針に対し、国会議員や法律関係者、人権団体などからは一斉に反発の声が上がった。「電話の盗聴はフィリピンにおいては裁判所の許可なしでは違法であり、その違法行為で得られた証拠で麻薬関連犯罪と関係づけるのは、違法行為に違法を重ねるようなものだ」という指摘である。

大統領府の法律顧問でもあるパネロ報道官は「外国政府が電話を盗聴して提供された情報は違法ではない」との見解を示し、リスト公表には法的問題点はなく、大統領も公表に同意していることを改めて強調した。

またパネロ報道官は「外国政府とはテロとの戦いと同時に、犯罪でも共に戦っており、その一環として情報提供があったと考えている」との姿勢を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ロシア船籍タンカーを大西洋で拿捕 ベネズエラ原

ビジネス

米ADP民間雇用、12月は4.1万人増 予想下回る

ワールド

米国務長官、デンマークと来週会談 グリーンランド巡

ビジネス

米製造業新規受注、10月は前月比1.3%減 民間航
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中