最新記事

米朝首脳会談

今だから振り返る、金正恩の残虐な犯罪の数々

Flamethrower Executions and Death Camps in North Korea

2019年2月27日(水)18時00分
カラム・パトン

2月26日、ベトナムのハノイに到着し、スターのような歓迎を受けた金正恩 Athit Perawongmetha-REUTERS

<トランプが金との「個人的に良好な関係」をアピールするせいで、米朝首脳会談のテーブルから抜け落ちてしまった北朝鮮の深刻な人権侵害の数々>

ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2月27日、ベトナムの首都ハノイで2回目の首脳会談を行う。だが人権団体は、金正恩政権による残忍な拷問や処刑にもっと目を向けるべきだと訴えている。

トランプは、北朝鮮に非核化を進めさせるうえで、金と個人的に良好な関係にあることがテコになるとアピールしてきた。

だが、人権侵害で知られる独裁者の金とトランプが個人的に親しいというのはおかしい。北朝鮮で日常的に行われている政治犯の処刑や飢餓など人権に関する議論が、交渉のテーブルから置き去りにされているからだ。

「ドナルド・トランプ大統領が人権に関知しないことは衝撃的だが、もっとひどいのは、金は北朝鮮住民にとって良い指導者だと持ち上げたことだ」と、国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチでアジアを担当するフィル・ロバートソンは本誌に語った。「人口を減らしてくれるから疫病は良い、と言うようなものだ」

ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、北朝鮮は国家に対する反逆者として10万人を山間部などの隔絶された場所にある政治犯収容所送りにしている。収容者は強制労働を課せられ、無残な死を遂げる。「そうした強制労働に加え、女性は北朝鮮関係者から組織的な性的虐待やレイプを受け、住民は海外の情報から完全に遮断されている。北朝鮮が世界最悪の人権侵害国家と呼ばれるのも当然だ」

公開処刑

金正恩が父の故・金正日総書記の後継者となった2010年以降、少なくとも421人の政権関係者が粛清されたと、脱北者による非政府組織「北朝鮮戦略情報センター」の報告書にある。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が取り上げたその報告書には、金政権が過去に用いた残忍な公開処刑の手口が詳しく載っている。方法は全部で9つ。その中には、政治犯を生きたまま動物のエサにする、高射砲の的にする、火炎放射器で焼却する、といった手口もある。

北朝鮮戦略情報センターの代表を務める脱北者の姜哲煥(カン・チョルファン)は米CNNに対し、金の側近2人が見せしめとして処刑された状況を語った。金の叔父で、2013年に失脚した張成沢・元国防委員会副委員長の側近2人は、地上から航空機を撃つための高射砲8門を並べて撃ち殺されたという。姜が目撃者から聞いた話によれば、処刑に立ち会わされた張は2人の血を浴びながら恐怖で気絶したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの援助拠点・支援隊列ルートで計798人殺害、国

ワールド

米中外相が対面で初会談、「建設的」とルビオ氏 解決

ビジネス

独VW、中国合弁工場閉鎖へ 生産すでに停止=独紙

ビジネス

ECB、ディスインフレ傾向強まれば金融緩和継続を=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中