最新記事

中国

中共中央「マリオ」パクリと即刻削除の怪を読み解く――中国政府高官を取材

2019年2月4日(月)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

任天堂の「マリオ」 Toru Hanai -REUTERS

中共中央政法委員会が反腐敗運動の宣伝動画として「マリオ」をパクリ、批判を受けた瞬間に弁明なしで即刻削除した。知財権で米中が対立する中、何を考えているのか? 中国政府高官を直撃取材した。

中共中央政法委員会がマリオそっくりの動画で宣伝活動

1月30日、中国共産党中央委員会(中共中央)政法委員会(略称:中央政法委)が日本のゲームメーカー「任天堂」のキャラクター「スーパーマリオ」にそっくりなキャラクターを使用した反腐敗運動宣伝動画をウェイボー(微博)上における中央政法委の公式アカウントに掲載した。

中央政法委とは国務院(中国政府)側の中央行政省庁である「公安部、司法部、国家安全部」および最高検察庁と最高裁判所を司る中共中央のその系列の「権威ある!」最高機関である。

その最高権威が反腐敗運動や知的財産権保護の宣伝動画に日本のキャラクターをパクリ?!

「不正行為をやめろ」という宣伝で、党自身がパクリをしているのでは話にならないだろう。

いきなりウェイボーで「ウソだろ?」「マジかよ!」「任天堂の許可を得てるの?」「おまえこそ、侵権(知財権侵害)だろ!」などと、多くの書き込みがスマホに送られてきた。

画面を見てみると、効果音までがそっくりではないか。

日本でマリオが出たころ、筆者は仕事と子育ての両立に必死で、ゲームに「子供の面倒」を見てもらいながら夕食の支度を急いだりしたものだ。あの効果音は、否応なしに子育てのころの板挟みの罪深さを連想させる。

「ウソでしょ?」

喰らいつくようにスマホの画面を追った。

やがて日本でも報道されるようになった頃には、なんと、今度は大陸のネット空間から、「全て」が消えてしまったではないか。

削除されたのだ!

なにごとか――?

中国政府高官を直撃取材

まるでブラック・ジョークだ。

2008年に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』を出版するに当たって、数多くの中国の若者を取材してきた。その結果、日本の動漫(動画=アニメと漫画)を普及させたのは、皮肉にも「海賊版」だった事実に行きついた。日本の原価の数十分の一という安価で手に入る動漫は、その安価さゆえに全中国を席巻し、80后(バーリンホウ)(1980年以降に生まれた者)の内、日本の動漫に触れたことのない者は一人もいないというほど、若者の間に浸透し、精神文化をも形成するに至っていた。慌てた中国政府は日本のアニメの放映時間を制限したり海賊版を取り締ったりし始めたが、もう遅い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ワーナー、パラマウントの買収案拒否 完全売却の可能

ビジネス

NY外為市場=円安/ドル高進む、高市新政権の財政政

ビジネス

米TI、第4四半期見通しは市場予想下回る 米中貿易

ビジネス

ネットフリックス、四半期利益が予想届かず 株価6%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中