最新記事

税制

フランス政府、燃料税19年引き上げを断念 デモ収拾なお不透明

2018年12月6日(木)11時50分

12月5日、フランスのマクロン政権は、来年1月に予定していた燃料税の引き上げを6カ月延期するとした前日の発表に続き、さらに来年いっぱい増税を見送ることを決めた。写真は国旗を燃やす増税反対のデモ参加者。フォンテーヌノートルダムで4日撮影(2018年 ロイター/Pascal Rossignol)

フランスのマクロン政権は5日、来年1月に予定していた燃料税の引き上げを6カ月延期するとした前日の発表に続き、さらに来年いっぱい増税を見送ることを決めた。家計負担増に抗議する国内各地のデモが収まらないことから、一段の譲歩を余儀なくされた。

フィリップ首相は議会下院に対し、「政府は対話する用意があり、それを示している。この増税は2019年予算案から削除された」と表明した。

燃料税引き上げに対する抗議に端を発した「黄色いベスト」運動はフランス全土に広がっており、マクロン政権発足以来、最大の危機となっている。

政府はまた、これより先、富裕税(ISF)に関する政府の方針を変更する可能性があることも明らかにした。マクロン大統領は昨年、ISFの課税対象を不動産取引や不動産資産に限定する形で狭めており、「金持ちの味方」との批判を招いていた。

グリボー政府報道官はRTLラジオで、すべての税関連政策は定期的に見直す必要があるとした上で、「公的資金によって賄われるわれわれの政策が結果的に機能せず、うまくいかない場合は政策を修正する。われわれは愚かではない」と述べ、ISFは2019年秋に見直しを行う可能性があるとした。

グリボー氏はその後の定例会見で、マクロン氏が全ての政党や労働組合、企業経営者らに対し、平静を呼び掛けるよう訴えたと説明した。

来週はエネルギーおよび港湾部門で労組のストライキが行われる見通しで、デモが波及するリスクもある。政府が譲歩した後もデモが収拾する兆しが見えないため、政府は前週末のパリでの激しい抗議活動に続き、8日も暴力行為が繰り広げられる事態に備えている。

フィリップ首相は前日、燃料税引き上げを見送る6カ月の間に家計の購買力底上げに向けた施策を検討すると説明。支持率低迷にあえぐマクロン氏が2017年半ばの就任後初めて主要政策を転換することになった。

燃料税を巡る政策の転換によって、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づく二酸化炭素(CO2)排出量削減目標の達成が難しくなる可能性がある。

トランプ米大統領は4日遅く、ツイッターに「私の友人のマクロン氏とパリのデモ参加者が、私が2年前に達した結論に賛同してくれたことは喜ばしい」と投稿、パリ協定は「致命的な欠陥がある」と批判した。

[パリ 5日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中