最新記事

女性差別

まだ続いていたインドネシア軍・警察による処女検査 今や軍将校の婚約者まで拡大?

Indonesian Police 'Virginity Tests' Criticised

2018年11月2日(金)16時00分
トム・ポーター

中国人のサイバー犯罪容疑者の身体検査をするインドネシア・バリの女性警官(2017年7月31日)Nyoman Budhiana/REUTERS

<「倫理観や身体検査」の一環とする処女検査に科学的根拠はなく、国際社会から廃止を求められているのに>

インドネシアで軍や警察を志望する女性は、今も採用時に「処女検査」を強制されている。

廃止を求める国際社会の圧力にもかかわらず、インドネシアの警察は採用予定の女性の「倫理観や身体検査」の一環として、2本の指を膣中に挿入して処女膜の有無を調べる「処女検査」をいまだに実施している、とオーストラリア放送協会(ABC)が10月20日に報じた。

世界保健機関(WHO)は2014年、処女検査に科学的根拠はないとの見解を発表。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領に対して即時廃止を求める声明を発表した。

ABCによれば、ヒューマン・ライツ・ウォッチに寄せられた告発で、身元が分からないようザキアと名乗ったある女性は、今年の警察の採用試験に応募後、処女検査を受けて不採用になった、と語った。

「膣だけでなく、肛門にまで指を挿入してきた。検査の間はずっと激痛だった」と彼女は言った。

「思い返すたびに泣けて、生きていくのが嫌になる」

面接で自分は処女だと訴えたが、不採用になった。

ニュージーランドのオークランド工科大学のシャリン・グラハム・デイビーズ准教授は2015年に発表した報告書で、女性応募者は「見た目」でもふるいにかけられている、と批判した。

【関連記事】インドネシア軍・警察の処女検査、 人権団体が廃止要求

軍でも横行

処女検査は警察だけでなく、軍の採用試験でも行われている。

軍に採用予定のリアンティと名乗る女性は今年8月、香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの取材に対し、インドネシア東部パプア州ジャヤプラの軍の仕事に応募したが、男性の衛生兵による処女検査を受けさせられたと語った。

「一刻も早く終わってほしかった。人生で最も長く感じた数分間だった。男性に触られた経験が一度もなかったから屈辱的で、ショックだった」と彼女は同紙に語った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2017年の報告書で、処女検査は「性に基づく暴力」であり「無意味なことが広く知られた慣習」と非難した。

検査はインドネシア軍の各部署の女性職員の採用で数十年続いており、軍将校の婚約者にまで対象が広がっている、と同団体は指摘する。

「軍や警察による侮辱的な処女検査をインドネシア政府が見逃し続けていることは、女性の権利を保護する政治的な意思が恐ろしいほど欠如している証だ」と、女性権利擁護ディレクターを務めるニシャ・バリアは言った。「それらの検査は女性を傷つけ、差別し、平等な就業機会を奪っている」

(翻訳:河原里香)

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月米ISM製造業景気指数、8カ月連続50割れ 

ビジネス

次回FOMCまで指標注視、先週の利下げ支持=米SF

ワールド

イラン最高指導者が米非難、イスラエル支援継続なら協

ビジネス

追加利下げ急がず、インフレ高止まり=米シカゴ連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中