最新記事

北朝鮮

仮想通貨詐欺で荒稼ぎする闇の北朝鮮ネットワーク

North Korea Is Making Money From Cryptocurrency Scam

2018年10月26日(金)15時30分
クリスティナ・マザ

北朝鮮による仮想通貨詐欺の手口が明らかに Pyongyang Press Corps/REUTERS

<北朝鮮が仮想通貨詐欺で資金を募っている実態が明らかになった。ソーシャルアカウントを欧米系から中国系に移行し、手口はさらに巧妙化する?>

北朝鮮政府が、仮想通貨詐欺や偽の電子コイン販売で資金を集めていることが、北朝鮮のネット活動に関する最新の調査によって明らかになった。

今年設立された「マリーン・チェーン」という企業は、電子トークン(代用貨幣)と引き換えに船舶の所有権を分割して販売していた。実際にどれだけの収益を上げたかは不明だが、設立から半年後の時点で同社のウェブサイトは削除されている。

今週「インターネット利用のパターン変化にみる、北朝鮮支配エリートの適応性と革新性の高さ」という報告を公表した情報サービス企業「レコーディド・フューチャー」のサイバーセキュリティ―部門によると、「マリーン・チェーン」のCEOはジョナサン・フン・カーコン船長と名乗るシンガポール国籍の人物で、長年に渡って北朝鮮の経済制裁逃れを手助けしてきたとされている。

報告によると、フンは投資家の会合などに姿を見せ、自身を電子コインの「表の顔」として売り込み、「マリーン・チェーン」を信用させることに成功していた。例えばこの3月には、上海で開催されたブロックチェーン技術や「サプライチェーン(供給システム)のデジタル化」に関する会合に出席した。フンは同社CEOの肩書で講演し、投資を募っていたと見られている。また同時期に香港で開催された、サプライチェーンや物流の技術革新に関する会合でも講演していた。

暗躍する北朝鮮ハッカー集団

「物理的な供給ネットワークと仮想上のネットワークの融合について説明していた」と、レコーディド・フューチャーのプリシラ・モリウチ戦略危機管理部長は本誌取材に語った。「フン船長は、シンガポールの北朝鮮への協力ネットワークの一員で、そのネットワークは金銭的に繋がっているというのが一般的な見方だ。様々な違法な人物たちとも手を組む、悪徳業者だ」

フンの現在のリンクトインのプロフィールには「マリーン・チェーン」のことは入っていないが、20年以上の船長としての経験と、様々な「船舶オーナー経営」に関するサービスを提供する「シンクラス・インターナショナル」という会社で10年以上勤務経験があると書かれている。2003年のニュース記事でフンは、モンゴルの船舶登録所の副所長とされている。コメントを求める本誌の取材申請には、直ちには返答がなかった。

過去数年間、金正恩(キム・ジョンウン)体制の資金集めの手段として、北朝鮮は様々な詐欺やサイバー攻撃を利用してきた。例えば2016年には、北朝鮮ハッカーがバングラデシュの銀行から8100万ドルを盗んだとされている。北朝鮮のハッカー集団「ラザルス・グループ」はこの事件の他にも、ヨーロッパなど世界の企業のコンピューターに侵入して身代金を要求したランサムウェアの「ワナクライ」に関与したと言われている。

北朝鮮はまた、盗難されたコンピューターを使って仮想通貨をマイニング(新規発行)している。しかし専門家によれば、北朝鮮が最も頻繁に行っているのは、ポーカーゲームの製作など低レベルのサイバー犯罪だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアが和平努力拒否なら米に長距離

ビジネス

ナスダックが取引時間延長へ申請、世界的な需要増に照

ビジネス

テスラ、ロボタクシー無人走行試験 株価1年ぶり高値

ワールド

インド、メキシコと貿易協定目指す 来年関税引き上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中