最新記事

対イラン制裁

「トランプは制裁中毒」とイラン外相。薬や食料など人道物資も対象から外さず

Trump Administration Is an ‘Outlaw Regime,’ Iran Says

2018年10月19日(金)16時40分
ジェイソン・レモン

トランプ政権の「制裁中毒は制御不能」と批判したイランのザリフ外相 Brendan McDermid-REUTERS

<制裁で苦境に立たされるイランの外相が、新たな制裁を発表したトランプ政権に辛辣な批判を浴びせた>

イランの20以上の金融機関や企業に新たな経済制裁を科す、というアメリカの発表を受けて、イランの外相はトランプ政権を「ならず者政権」と呼んだ。

イランのモハメド・ジャバド・ザリフ外相は10月17日のツイートで、イラン革命防衛隊の傘下にある民兵組織「バシジ」の活動に関与したとしてイランの2つの金融機関と多数の企業を制裁対象に指定したアメリカを激しく非難。10月3日に人道物資を制裁対象から除外するよう命じたICJ(国際司法裁判所)の決定に違反する措置だ、と訴えた。

「(トランプ政権は)法の支配やあらゆる人々の人権を完全に軽視している」と、ザリフは書いた。「アメリカのならず者政権は、イランへの敵対姿勢を強めている。制裁中毒だ」

ザリフによれば、制裁対象に指定された金融機関の1つは「食料品と医薬品の輸入の決済に不可欠な銀行」だという。

イラン外務省の報道官はアメリカによる新たな制裁措置について、国際秩序に対する「侮辱」であり「やみくもな悪意の表れ」だと批判した。米ラジオ局「ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)」が報じた。

イラン経済は大打撃

アメリカが10月16日に新たな制裁対象にしたのは、中東最大の農業機械メーカー「イラン・トラクター・マニュファクチャリング」や、中東最大の鉄鋼メーカー「モバラケ・スチール」を含む20以上の金融機関や企業。米ブルームバーグによれば、スティーブン・ムニューチン米財務長官は声明で、民兵組織であるバシジは「少年兵を勧誘して訓練し、洗脳して国外の戦場に送っていた」とし、制裁対象になった企業はバシジの活動を支援していた、と批判した。

トランプ政権発足後、イランとアメリカの間の緊張を増している。トランプは今年5月、イランと欧米など6カ国が2015年に締結した核合意から離脱した。そして8月には、英仏独、ロシア、中国の反対を押し切って、対イラン経済制裁を再発動した。

ICJは10月3日、1955年にイランとアメリカが結んだ友好経済関連の条約を理由に、食料品、医薬品、民間航空機の修理部品などの人道物資を制裁対象から除外するようアメリカに命じたが、マイク・ポンペオ米国務長官は逆に条約破棄を発表、イランは政治目的でICJを「悪用している」と批判した。

対制裁の太宗となるイラン産原油の禁輸発動を11月5日に控え、イランの政権幹部は相次いでトランプ政権を非難している。アメリカの制裁再開で、イラン経済は既に大打撃を受けている。

IMF(国際通貨基金)が10月8日に発表した報告書によれば、当初は成長が見込まれていた今年のイラン経済は、制裁の影響ですでに後退局面に入っている。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米データブリックス、資金調達後に評価額が1000億

ワールド

米国家情報長官、情報機関の現旧職員37人の機密取扱

ビジネス

FRB議長が住宅業界に「深刻な打撃」とトランプ氏、

ビジネス

米株価、ジャクソンホール会合時期は毎年堅調傾向 例
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中