最新記事

開発援助

日中アフリカ支援合戦で、軍配が上がるのはどっちだ?

2018年10月18日(木)18時00分
トリディベシュ・シン・マイニ(インド・ジンダル・グローバル大学助教)

日本政府はアジアとアフリカの連結に意欲を燃やしている(8月にナイロビで開催されたTICADのサイドイベントでスピーチする安倍首相) Thomas Mukoya-REUTERS

<過剰債務を懸念し、中国との違いをアピール――控えめに実績を積む日本に存在感あり>

10月6~7日、東京でアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合が開かれた。来年8月に横浜で開催される7回目の首脳会合、TICAD7に向けて討議を行うためだ。

TICADは日本政府が主導し、国連、国連開発計画、世界銀行およびアフリカ連合委員会と共同で93年から開催されている。アフリカへの関心の喚起を目的とする国際会議で、開始以来、アフリカ開発に中心的役割を果たしてきた。

日本は08~13年にアフリカで小中学校1321校を建設し、4778の医療施設を改善し、1079万人に安全な飲料水へのアクセスを提供。16年にケニアで開催された前回のTICADでは、向こう3年間にインフラや医療分野に総額300億ドル規模の投資を行うと、安倍晋三首相が表明した。

中国にしてみれば、先般の閣僚会合はさまざまな意味で気になる。最も注目すべきは、日本はアフリカ諸国の債務レベルへの懸念から融資に慎重になっていると、河野太郎外相が言明したことだ。インフラ開発のためにアフリカに過剰な融資をする中国よりも、日本のほうが思いやりがあるとの含みがある。

河野は中国との違いを印象付けるかのように、日本はアフリカのインフラ開発支援に当たって、地元住民への経済的恩恵や設備の維持・管理手法の伝授を重視しているとも発言。さらに、医療や防災分野での支援に前向きだと繰り返した。

悪いイメージがないから

問われているのは経済関係だけではない。日本はアフリカとアジアを結び付け、前回のTICADで安倍が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」にアフリカを取り込む未来像を描いている。実現のため、インド政府と推進する「アジア・アフリカ成長回廊」構想では、両地域の連結性向上や経済成長の促進を目標としている。

一方、北京では9月3~4日に中国・アフリカ協力フォーラムが開催され、習近平(シー・チンピン)国家主席が総額600億ドルのアフリカ金融支援を表明。対中懐疑論を解消すべく、「一帯一路」経済圏構想はウィンウィンを目指すもので、アフリカ諸国の内政に干渉する意図はないと強調した。

日本には払拭すべき悪いイメージがない。国際協力機構(JICA)はアフリカで数多くの重要なインフラ事業を支援しているが、やり方は控えめだ。ウガンダで送電網、タンザニアやザンビア、モロッコで鉄道・高速道路の建設を支援し、昨年にはケニア政府と、モンバサ港周辺のインフラ整備のため、最大124億6600万円の円借款貸付契約を結んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中