最新記事

コンプライアンス

財務省に激震 KYB、987件のデータ改ざんの疑いあるうち庁舎70件公表

2018年10月19日(金)18時50分

10月19日、KYBは、建築用の免震・制震装置のデータを改ざんしていた問題で、不適合品が使われている可能性のある物件が新たに1件判明、合計987件に上ることを明らかにした(2018年 ロイター/Issei Kato)

油圧機器メーカーのKYB<7242.T>と子会社のカヤバシステムマシナリーが建築用の免震・制振装置のデータを改ざんしていた問題で、KYBの齋藤圭介取締役は19日、国土交通省内で記者会見し、不適合品が使われている可能性のある物件が新たに1件判明、合計987件に上ることを明らかにした。

さらに、基準には収まっているものの、データを書き換えた製品が使われている物件が108件あった。

同社のデータ改ざんに対する認識の甘さがあらためて問われそうだ。

改ざんされたのは、地震の際に建物の揺れを抑える免震オイルダンパーと制振オイルダンパーの検査結果データ。2003年1月から2018年9月まで改ざんが行われていた可能性がある。

免震オイルダンパーの性能は国の基準値からプラスマイナス15%以内に収まるよう定められているが、同社はプラスマイナス10%に収まるよう顧客と契約。この基準から外れたデータを基準値に収まるよう書き換えていた。

また基準値に収まっていたにもかかわらず、「データを整える」(同社関係者)ために書き換えていたケースも108件あった。

ある医療施設では基準値から42.3%かい離した免震オイルダンパーが使用されていた。ただ、安全性を検証したところ、この施設は震度6強から7程度の地震にも耐えられる結果を確認できたという。

同社はこの日、不適合品が使われている可能性のある庁舎109件のうち、先方の了解を得られた70件を公表した。この中には財務省本庁舎や防災活動の拠点になる消防庁舎(大阪府東大阪市や三重県鈴鹿市、青森県八戸市など)も含まれていた。

調査は公共性の観点から庁舎を優先したが、今後は先方の了承が得られた段階で順次、物件名を公表していく。

同席したカヤバシステムマシナリーの廣門茂喜社長は、データが改ざんされた可能性のある免震・制振装置を台湾に輸出していることを明らかにした。原発施設や五輪施設に使われているかどうかについては「詳細データがない」として言及を避けた。

免震オイルダンパーは基準値からプラス側に振れた場合、ダンパーの動きが硬くなり、揺れが建物に伝わりやすくなる。一方、マイナス側に振れた場合はダンパーの動きが軟らかくなり、揺れが大きくなる恐れがある。

業績への影響は、現時点では試算できないという。

(志田義寧)

[東京 19日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米単位労働コスト、第3四半期改定値は0.8%上昇に

ワールド

イスラエル、シリア南部に防衛地帯設置へ ゴラン高原

ビジネス

過剰政府債務、25年に市場揺るがす恐れ=BIS報告

ワールド

ブラジル大統領、脳出血で緊急手術 経過は良好
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新研究が示す新事実
  • 4
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 9
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 10
    ティラノサウルス科の初記録も!獣脚類の歯が明かす…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中