最新記事

米中摩擦

米軍戦略爆撃機の南シナ海と東シナ海飛行は米中覇権争いの始まり?

U.S. Flies Nuclear Bombers Near Disputed Chinese Bases

2018年9月28日(金)19時30分
デービッド・ブレナン

米軍のB52戦略爆撃機が南シナ海と東シナ海を飛行した Kim Hong-Ji-REUTERS

<対中貿易強硬策だけではない、トランプは軍事面でも中国が嫌がる政策をどんどん実行している>

9月23日と25日の2日にわたり、中国が他国と領有権を争う南シナ海と東シナ海で、米空軍が核兵器を搭載できる米軍の戦略爆撃機B52を飛行させたことが明らかになり、中国は「挑発だ」と猛反発している。

中国国防省の任国強報道官は27日の月例会見で、地域の緊張が高まった責任はアメリカの強引な外交政策にある、と言った。AP通信によれば任は、「米軍機による挑発行為に断固反対し、中国の権利と利益を守るためあらゆる必要な措置を取る」と記者団に語った。

B52は9月23日に南シナ海、9月25日に東シナ海の上空を飛行した。

中国は、ベトナム、フィリピンなどの周辺国と領有権を争う南シナ海で一方的に人工島を造成し、電波妨害装置を設置、爆撃機や弾道ミサイルを配備するなど、着々と軍事要塞化を進めてきた。東シナ海では、日本が実効支配する尖閣諸島で、中国と台湾が領有権を主張している。

強気のアメリカ

アメリカはこれまで、南シナ海は国際水域であると主張し、米軍の艦船や航空機による「航行の自由」作戦を展開してきた。

ジェームズ・マティス米国防長官は9月26日の記者会見で、B52の飛行に対する中国の抗議を一蹴した。「もしこれが、中国が(南シナ海を)軍事拠点化する前なら、爆撃機が飛んだところで(米軍基地があるインド洋の)ディエゴ・ガルシア島にでも向かったのだろう、というだけで済んでいたはずだ」。さらにこう強調した。「今回の飛行は通常の活動と何ら変わらない」

米国防総省のデーブ・イーストバーン報道官も、「同盟国やパートナー国との相互運用能力を高めるための通常任務」と説明した。

だが、偶然ではないだろう。米中関係は貿易不均衡をめぐる報復関税の応酬で悪化しているだけではなく、軍事的な角突き合いも激しくなっている。中国の台頭を止めようとするアメリカと、その手を振り払おうとする中国との間の覇権争いが本格的に始まったとも見える。

ドナルド・トランプ米大統領は26日に開かれた国連安保理の会合で、中国の習近平国家主席は「もう友達ではないかもしれない」と発言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中