最新記事

貿易戦争

米関税免除の成功に沸いた韓国鉄鋼界 代償の割り当て枠で苦境、日本と明暗

2018年9月23日(日)09時45分

9月13日、韓国で大きな外交的成果として当初歓迎された米国による鉄鋼輸入関税免除は、今ではその代わりに導入された輸入数量を制限するクオータ制がネックとなり、一部の鉄鋼メーカーの生産能力が半減するまでに追い込まれている。写真は、イリノイ州のスチールコイル倉庫で貿易について演説するトランプ米大統領。7月撮影(2018年 ロイター/Joshua Roberts)

韓国で大きな外交的成果として当初歓迎された米国による鉄鋼輸入関税免除は、今ではその代わりに導入された輸入数量を制限するクオータ制がネックとなり、一部の鉄鋼メーカーの生産能力が半減するまでに追い込まれている。

事情に詳しい複数の人物によると、生産ラインは休眠状態だという。その一方で、日本の鉄鋼メーカーは、25%の米関税に直面しているにもかかわらず、鋼管の対米輸出を拡大している。日本勢は、石油高で増産傾向にある米国の石油業者などに、高性能な掘削鋼管などを提供しているが、地元企業による代替は難しいと言われる。韓国企業の製品ではそうはいかない。

韓国は3月、米鉄鋼関税の適用対象から除外された最初の国となった。自国の鉄鋼メーカーにとって3番目に大きな輸出市場である米国に、無関税で継続的なアクセスが可能なはずだった。

ネクスチールやヒュースチール、世亜製鋼といった特殊鋼管メーカーにとって追い風となるはずが、逆風に変わった。前年から3分の1近く減った今年の輸入割当枠は、5月までにすでにほぼ使い切ってしまった。その結果、ネクスチールとヒュースチールは、来年分の出荷を開始できる10月と11月までそれぞれ工場稼働率の引き下げを余儀なくされている。

世亜製鋼など一部メーカーは、割当枠を逃れるため、米国にある小規模な生産拠点への投資を増やすことを検討している。米商務省によると、日本製の鋼管製品の輸入量が今年1─7月に、前年比50%近く増加した一方、韓国製品のそれは18%減少した。

「もし米国が(通商政策で)メキシコとカナダに強硬な態度を取らなければ、韓国からの輸入はお荷物になりかねない。そうなれば、輸入割当枠が削減される可能性がある」と、通商法が専門である梨花女子大学のWonmog Choi教授は指摘。「板ばさみになっているということを、われわれは認識すべきだ」

ただ、鉄鋼の輸出量全体で見ると、韓国は日本を凌駕(りょうが)している。米データによると、制限枠があるとはいえ、韓国は今年、263万トンの鉄鋼を米国に輸出することが可能であり、これは日本の昨年の対米輸出量173万トンをはるかに上回る。

韓国鉄鋼大手のポスコや現代製鉄は、米国での売上高が全体の5%に満たないため、輸入割当枠の影響をあまり受けてはいない。一方、両社に比べて小規模なヒュースチールやネクスチール、世亜製鋼といった企業にとって米国市場はきわめて重要であり、輸出先の7割を占めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニーG、新ファンドの本格運営を開始 200億円超

ワールド

NATO、米国の関与縮小の可能性に備えるべき=トル

ワールド

米制裁対象の中国タンカーがホルムズ通過、封鎖開始後

ワールド

シェブロン、ベネズエラで資産交換に合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 10
    BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中