最新記事

米共和党

それでも「無能」トランプが解任されない理由

The Incapacitated President

2018年9月19日(水)17時45分
ジャメル・ブイエ(スレート誌政治担当記者)

ニクソン時代との違い

これらの指摘から明確に浮かび上がるのは、気分屋の性格と無知と精神的な衰えのせいでトランプが職務を遂行できない実態と、国家を大惨事から救うために側近たちがトランプを蚊帳の外に追いやっている構図だ。

指導者として不適格な大統領に代わり、側近が実権を握る例は過去にもあった。第28代大統領ウッドロー・ウィルソンが脳梗塞で倒れると、妻のイーディスが職務を代行した。リチャード・ニクソンも退任前の数カ月間は鬱に苦しみ、アルコールと睡眠薬を手放せなかった。

ただしウィルソンやニクソンの時代には、議会も国民も政権内の混乱を十分に感知していなかった。一方、トランプ政権は混乱の様子が漏れ聞こえてくる。ウッドワードらの指摘が真実なら、アメリカは大統領が職務を遂行できず、その場しのぎの政権運営が続くという深刻な政治的危機の真っただ中にある。

ワシントン界隈では、ほとんどの人がこの事実を知っていて、受け入れているようだ。共和党の議員も例外ではない。「(トランプのことは)心配だ」と、上院外交委員会のボブ・コーカー委員長は昨年語っている。「この国のことを気に掛けている人間なら誰でもそうだろう」

トランプを厳しく批判し、そのぶんトランプから罵倒されてきたコーカーは、次の選挙には出馬せず、今期限りで引退することを表明している。彼に言わせれば、トランプは大統領としての職務を「リアリティー番組」のように扱い、アメリカを「第三次世界大戦に導き」かねない無謀な脅しをちらつかせる。

やはり今期で引退を表明しているジェフ・フレーク上院議員も、公然とトランプを批判してきた。ハーバード大学法科大学院の卒業式では、「わが国の大統領職は、破壊と分断を強く好み、憲法についてはわずかな知識しかない人物によっておとしめられてきた」と語った。

だが、大統領の無能が公然の秘密となっていても、対策を講じるべき存在である議会共和党には行動を起こす気配がない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小幅続落、ソフトバンクGが押し下げ

ワールド

米議会、国防権限法案を公表 トランプ氏要求上回る9

ビジネス

米サウスウエスト航空、通期EBIT見通しを下方修正

ワールド

アフリカのコンゴとルワンダ、トランプ氏仲介の和平合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中