最新記事

NAFTA

NAFTA再交渉「カナダ抜き」の屈辱 ナイーブ過ぎたトルドー首相

Justin Trudeau Can’t Take Any More Humiliation

2018年9月4日(火)19時30分
ジョナサン・ケイ

外交ナイーブで老獪なトランプに弄ばれている、と批判の的になってしまったカナダのトルドー首相 Tatyana Zenkovich/REUTERS

カナダのトルドー首相が「友達」だと思っていたメキシコは、さっさとトランプとディールを結んでしまった。これ以上の屈辱はない。だが、まだ手はある

8月27日、メキシコとアメリカの二カ国間で行ったNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉で大筋合意したことは、二つの格言を思い出させる。一つは19世紀にイギリスの首相を務めたパーマストン卿による「国家には永遠の友人も同盟国もない。あるのは永遠の国益だけだ」。もう一つは「正直者がばかを見る」だ。

ドナルド・トランプ米大統領のツイッターがメキシコに対する非難や「国境の壁」問題に溢れていた昨年、カナダのジャスティン・トルドー首相とクリスティア・フリーランド外相は、メキシコを裏切ってアメリカと二国間協定を結ぶことはない、1994年に発足した北米3カ国間の自由貿易協定であるNAFTAを維持する、と勇ましかった。2016年にバラク・オバマ大統領(当時)、トルドー、メキシコのペニャニエト大統領の3人が結束をアピールした北米3カ国首脳会談を思い起こさせる団結ぶりだ。

当時、トランプの保護主義的な攻撃によって打撃を受けるのはメキシコだと考えられていた。そこでカナダが誠実な仲介者の役割を果たし、メキシコにも公平な取引をアメリカに要求することになるはずだった。

今後は「米メキシコ貿易協定」に?

だが気まぐれなトランプは、大統領就任2年目に攻撃対象をカナダに変え、その貿易慣行を批判。トルドー個人をも侮辱した。そして8月末、メキシコは「友人」を裏切って国益を追求した。

メキシコのルイス・ビデガライ・カソ外相は合意について次のように言った。「我々には、カナダとアメリカの政治的な関係をコントロールすることはできない」「一方、アメリカとの貿易協定を失うことは、メキシコ経済にとって許容しがたいリスクだ。数百万人の雇用がアメリカ市場に依存している」

トランプは新たな協定について、NAFTAの名称を用いず「米メキシコ貿易協定と呼ぶことにする」と表明した。カナダとの協議がまとまらなければ、二国間だけで協定を発足させるという意味だ。その場合は、カナダからの輸入車に25%の高関税を課すという脅しもちらつかせた。専門家はこの関税が発動された場合、カナダは16万人の雇用を失い、景気は後退し、カナダ・ドルは米ドルに対して大幅に下落することになるだろうと予測する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベセント米財務長官、インドに対する追加関税撤廃の可

ワールド

米、嵐で16万戸超が停電・数千便が欠航 異常な低温

ワールド

市場の投機的、異常な動きには打つべき手を打っていく

ワールド

米ミネアポリスで連邦捜査官が市民射殺 移民取り締ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 6
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中