最新記事

サプライチェーン

貿易戦争が米企業に迫る「メイド・イン・チャイナ」再考 米国工場の方が低コスト?

2018年8月27日(月)15時45分

脅かされるサプライチェーン

トランプ米大統領が、中国製品に対して追加的な関税発動を脅していることもあり、報復的な貿易戦争の拡大は、深く絡み合い、グローバル化したサプライチェーンに甚大な影響を与える可能性がある。

直接的な打撃を受ける企業もある。

米ジョージア州を拠点とする農業機械メーカーAGCOは、米通商代表部(USTR)に対し、江蘇州常州市で製造している農業器具が、関税措置により米国で「価格競争力を失う」と警告した。

化学メーカーのマルーン・グループも、「価格面で市場から追いやられる」と警鐘を鳴らす。米ヒューストンで中国製部品を使ってエアコンを組み立てているグッドマン・グローバルも同様の悩みを抱える。

すでに対策に動いた企業もある。アットホーム・グループやRHといった米家具メーカーは、中国生産を減らすことを明らかにした。

サプライチェーンの調整で対応しようと試みている企業もある。蘭栄養食品ロイヤル傘下のDSMチャイナは、中国政府による報復関税を避けるため、原料となる米国産大豆をえんどう豆パウダーなどに置き換えられないか、検討している。

貿易摩擦リスクが高まったことで、「ビジネス全体の見方を再確認するよい機会となった」と、DSMチャイナでグローバル戦略マーケティング責任者を務めるバーナード・チュン氏は語る。

また、サプライチェーンのどこに位置しているかによっても、対応は変わってくる。

米GMMノンスティック・コーティングスは、中国において、米調理器具メーカーのジョージ・フォアマンやベイカーズ・シークレットなどからの製品コーティング用薬品受注が3─4割減少したことを受け、一部の生産をインドに移した。

これらの顧客は、生産の一部を中国から移転しているという。

「この関税騒ぎで、中国に拠点を持つことに対する圧力が一層高まり、米国企業の調達部門が(生産移転を)極めて容易に決断できるようになっている」と、GMMのラビン・ガンジー最高経営責任者(CEO)は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中