最新記事

インバウンド

運営権獲得へ海外カジノ事業社が猛攻「大阪夏の陣」

2018年8月22日(水)19時35分

8月22日、7月末のある夜、天神祭のフィナーレを飾る豪華な花火が、大阪の空を明るく染めた。今回初めて花火のスポンサーとなったのは、マカオのカジノ運営会社、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント。写真はルーレットテーブル。都内で4日撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

7月末のある夜、天神祭のフィナーレを飾る豪華な花火が、大阪の空を明るく染めた。今回初めて花火のスポンサーとなったのは、マカオのカジノ運営会社、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント。

この数時間前、41歳の大富豪、メルコのローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は、松井一郎・大阪府知事と面会していた。それに先立ち、同氏は自然災害対策のために大阪府に多額の寄付を行った。

MGMリゾーツ・インターナショナルのジェームス・ムーレンCEOも、大阪にいた。寄付は行わなかったが、チャーターした船に約100人を招待し、ブルーマングループのショーでもてなした。

同時期に行われたこうしたパーティーやイベントは、日本初のカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を目指す大阪に、カジノ運営会社として存在をアピールする試みだ。この数日前、国会ではIR実施法が成立し、最初の設置場所として3カ所が選ばれることが決まった。

政治的な強い支援、施設に利用可能な土地の存在、地元企業の後押しに支えられ、人口270万人を抱える大阪市は、カジノを設置する日本初の大都市になるとみられている。

MGM幹部、エド・バワーズ氏は「東京は手を上げていないし、横浜も手を上げていない。大阪は手を上げた」と話す。

大阪でのカジノ運営受託を目指す外国企業は、この他にギャラクシー・エンターテインメント、シーザーズ・エンターテインメント、ゲンティン・シンガポール、ラスベガス・サンズなどがある。

モルガン・スタンレーの試算によると、大阪でカジノを運営すれば、年間約40億ドルの売り上げを生み出すという。

経済規模や政治的な力で東京の後を追う大阪にとって、IRは観光産業を拡大させ、収益を増やす手段となりえる。大阪では、2024年までにIRをオープンさせたいとしているが、自治体が事業者を選定した後にも、政府の承認が必要となる。

松井大阪府知事は、ロイターのインタビューで「国が観光立国の目標を掲げるなか、大阪が観光客誘致のトップエリアになりたい。観光産業をしっかりと大阪の産業の柱の1つに育てていきたい」と述べた。

カジノ運営会社の幹部、ロビイストや政治家など数十人への取材を通じ、カジノ誘致に前向きではない大阪府民の支持を得ようとする外国企業の高度なキャンペーンの姿が明らかになった。

一方、大阪府はカジノ事業者選定に関わる不透明さ、不正を一切排除するため、カジノ事業者との接触には厳格なルールを定めている。

「IR推進局における事業者対応等指針」では、「事業者提案や面会は、原則として庁舎内において2名以上で対応する」とされているほか、事業者との会食・パーティー、事業者から宣伝用のカレンダーや文房具などの事務用品を受け取ることが禁じられている。

現時点で、少なくとも8つの大手カジノ運営業者が大阪府と接触している。そのうちMGM、サンズ、メルコは、日本でのIR事業参入に関し、100億ドル以上の投資をする準備があると表明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃を警告・ハマスに武装解除要求

ビジネス

米国株式市場=下落、ハイテク株に売り エヌビディア

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで上昇、介入警戒続く 日銀

ワールド

トランプ氏「怒り」、ウ軍がプーチン氏公邸攻撃試みと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中