最新記事

トルコ

トルコリラ安ひと段落 エルドアン大統領、米電化製品の不買呼び掛け

2018年8月15日(水)09時20分

8月14日、トルコのエルドアン大統領(写真)は、米国製の電化製品に対し不買運動を実施すると表明した。7月撮影(2018年 ロイター/Umit Bektas)

トルコのエルドアン大統領は14日、米国製の電化製品に対し不買運動を実施すると表明した。米国との対立を背景としたトルコリラ下落を受け、対抗措置を講じる構えとみられる。

リラは利上げに否定的なエルドアン大統領の姿勢や対米関係の悪化を受けて年初来から40%超下落。13日には対ドルで7.24リラの最安値を付けた。

14日は一時6.2995リラまで値を戻し、1947GMT(日本時間午前4時47分)時点で前日比約9%高の6.33リラを付けた。アルバイラク財務相が16日に米国、欧州、中東の投資家と電話会議を開くとの報道が手掛かりとなった。

エルドアン大統領は、与党・公正発展党(AKP)に向けた演説で、トルコは経済戦争の標的になっていると主張し、リラを下支えするためドルやユーロを売るよう国民にあらためて呼び掛けた。

「国民とともにドルや為替相場、インフレ、金利に対して断固として立ち向かう。一致団結してわが経済の独立を守る」とし、「米国製電化製品のボイコットを行う」と言明。米アップルのiPhone(アイフォーン)を例に挙げ、サムスンやトルコ企業の製品への乗り換えを促した。

トルコに投資する企業へのインセンティブを強化する考えも示し、「危険があるからといって投資を先送りしたり、自国通貨を外貨と交換したりすれば、敵に折れることになる」と述べた。

米国はトルコで拘束されている米国人牧師を巡り同国に制裁を科したほか、トルコからのアルミ・鉄鋼輸入に対する関税引き上げも発表している。

米国務省のナウアート報道官は、トルコの経済問題は米国が引き起こしたものではないと強調し、「エコノミストは間違いなく、トルコで起きていることは米国が最近導入した様々な政策の影響をはるかに超えるものだと言うだろう」と述べた。

また、ホワイトハウスのサンダース報道官は、トルコが米国人牧師をいまだ解放していないことにトランプ大統領は苛立っていると明らかにした。

ホワイトハウス当局者はロイターに対し、トルコが米国人牧師を解放しなければ、米国は同国に一段の経済的な圧力を掛ける可能性があるとの見方を示した。

トルコリラ相場は14日の取引でやや落ち着きを取り戻したが、投資家の間では、中銀が前日明らかにした流動性供給策ではリラ安の根本原因に対処できないとの見方が出ている。

シュローダーズの新興国市場エコノミスト、クレイグ・ボザム氏は「金融・財政政策の引き締めや、短期的に経済が痛手を受ける可能性を認める姿勢を市場は求めている。こうした対応がなければ、事態の安定化に向けた措置を約束しても全く信頼性はない」と語った。

[イスタンブール 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 6
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中