最新記事

インドネシア

「世界一早く水没する都市ジャカルタ」BBC報道にインドネシアが動じない理由とは?

2018年8月14日(火)18時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)


2050年にはジャカルタが水没すると報じたBBCのニュース BBC News / YouTube

ジャカルタは北でジャワ海に面し、南部は山間部で降雨がジャカルタ市の地下に豊富な水脈を作り地下水を提供している。さらに市内には13の大小河川が流れてジャワ海に注ぐなど、そもそも地盤が軟弱で全体が「沼地」状態にある。このためジャカルタでは、ちょっとした大雨でも市内各所で大洪水が発生、市民生活や交通網に深刻な影響をもたらすのが常である。

こうしたインドネシア特有の環境に地下水汲み上げによる地盤沈下と海面上昇が相乗効果となり水没の危機に見舞われているのだ。

■参考記事「地球温暖化による海面上昇 90年代以降に上昇ペースが加速」

また2015年には国連と世界銀行が行った気候変動政府間パネルでの発表で、ジャカルタの大半が海面下に水没するのは2025年と予想、海水が現在の海岸線から南の内陸部へ約3km流入し、北部商業地区の大半がマヒして数百万人が避難する事態になると警告している。

今後10年間で最大5メートル地盤が沈下する恐れがあり、2030年にはスカルノ・ハッタ国際空港が海面下に、2050年には政府機関が集中しているジャカルタ市内中心部が水に漬かるだろうと指摘している。

インドネシア政府はこうした各種予測や警告を受けて、ジャカルタ市内の排水システム工事を着工させ洪水対策を進めるとともにジャカルタ沖に巨大な防潮堤や堰の建設をオランダ政府主導で進めることを決め、2014年からその第1期工事として既存の防潮堤のかさ上げ工事を始めている。

日本の技術協力で地盤沈下対策も

2017年7月27日にはインドネシア政府公共事業・国民住宅省水資源総局と日本の国際協力機構(JICA)との間で開発計画調査型技術協力「ジャカルタ地盤沈下対策プロジェクト」が署名され、2020年9月まで地盤沈下や地下水の現状把握、地盤沈下対策のアクションプラン作成などで協力することが決まった。

ジャカルタでは以前、度重なる洪水対策への協力のため日本の専門家が実地調査のためにジャカルタ入りしたものの、有効な対策を見出せなかった経緯もあり、限られた時間の中でJICAの協力でどこまで実効性のある対策が打ち出せるか、注目と期待が集まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中