最新記事

金融

トルコリラ20%急落し最安値 米の追加関税圧迫、大統領ら発言も歯止めかからず

2018年8月11日(土)10時42分

8月10日、トルコリラが対ドルで一時約20%急落し、過去最安値を更新した。1日の下落率としては2001年以来の大きさとなる。通貨リラ(2018年 ロイター/Murad Sezer)

10日の取引で、トルコリラが対ドルで一時約20%急落し、過去最安値を更新した。1日の下落率としては2001年以来の大きさとなる。

その後は下げ幅を幾分縮小し、約16%安の6.44リラ近辺で推移している。

トランプ米大統領がトルコに対するアルミ・鉄鋼関税引き上げを表明したことを引き金にリラ売りは加速。リラ急落阻止に向け、エルドアン大統領が演説、アルバイラク財務相が新たな経済計画を公表したものの、トルコ下落にさほど歯止めはかかっていない。

リラは年初来では40%超値下がり。エルドアン大統領が金融政策に及ぼす影響への懸念や米国との関係悪化などが圧迫要因となってきている。

トランプ大統領はこの日、ツイッターへの投稿で、トルコからの輸入関税についてアルミニウムを20%、鉄鋼を50%に引き上げることを承認したことを明らかにした。リラについては「非常に強いドルに対し急落している!」と指摘し、われわれのトルコとの関係は現在は良くない!」と述べた。

トルコ通商省は米国の関税引き上げ措置は世界貿易機関(WTO)の規定に反すると批判した。

こうした中、エルドアン大統領は国民に対し、保有するドルや金をリラに両替するよう訴えた。

大統領は北東部の都市バイブルトでの演説で「もしドルや金を枕の下に入れているのなら、銀行でリラに両替すべきだ」と発言。「これは国家の戦いであり、経済戦争を仕掛けた者に対するわが国民の報いとなる」と語った。「ドルがわれわれの道を阻むことはできない。心配無用だ」とも述べた。

アルバイラク財務相も新経済計画を発表。中央銀行の独立性や財政規律の強化を盛り込んだものの、投資家の不安を払拭し、リラ急落阻止に向けた詳細には踏み込まなかった。

TDセキュリティーズの新興国市場戦略主任、クリスチャン・マジオ氏は「(トランプ大統領の)ツイートはトルコの剣よりも強し」とし、新経済計画に新味はなかったと述べた。

リラ急落の影響は世界市場にも波及。欧州株式市場ではトルコへのエクスポージャーの大きい銀行株が急落し、米株式市場でも銀行株に売りが出ている。

他のトルコ資産も売りを浴び、ドル建てトルコ国債は急落し、多くが過去最安値を更新。iシェアーズMSCIトルコETF(上場投資信託)も急落し、2009年3月以来の低水準を付けた。

トルコ国債の保証コストも急上昇。5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は2009年3月以来の高水準となった。

[イスタンブール/アンカラ 10日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カンタス航空、コロナ禍中の解雇巡り罰金 豪労働訴訟

ビジネス

焦点:ジャクソンホールに臨むパウエル議長、インフレ

ワールド

台湾は内政問題、中国がトランプ氏の発言に反論

ワールド

香港民主活動家、豪政府の亡命承認を人権侵害認定と評
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中