最新記事

中国

中朝国境、丹東市に住宅購入制限令

2018年7月23日(月)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中朝国境の街、中国遼寧省丹東市(2016年9月) Thomas Peter-REUTERS

丹東市に住宅購入制限令が出るほど、中朝国境の街への期待が高まっている。ポンペオ氏が対北朝鮮への制裁維持を強調して中露を牽制し、中国政府は10数名の不法交易者を摘発したが、庶民の勢いは止まりそうにない。

丹東市の住宅価格が高騰

「先生も丹東にマンションを買いませんか?」

昔の教え子からメールが来たのは今年4月に入ってからのことだ。彼は北京を中心に不動産経営をしていたが、やがて拠点を天津に移し、のちに遼寧省に移していた。

マンションを何件も購入しては、高騰した時期に転売し、富を蓄積していった男だ。最初筆者に北京のマンション購入を勧めたのは、まだ90年代末のことだった。5環(第5環状線)がまだ出来あがっておらず、これができたら5環以北の住宅価格が高騰するので、「今のうちに」と勧めてきた。笑ってやり過ごしているうちに、5環の建設も終わり、2008年の北京オリンピックが始まる頃には、住宅価格は6倍に跳ね上がっていた。

一方、2002年、それまで中国人民銀行の総裁を務めていた戴相龍氏が天津市の市長兼副書記になると、改革開放後の繁栄から取り残されていた天津市は、いきなり著しい発展を遂げるようになる。それを見越して、すぐさま拠点を天津に移すといった具合に、その教え子の、時勢を読むビジネス感覚は優れている。

その彼が、今度は遼寧省の丹東市に投資しようというのである。

ビジネスの話にはまったく無縁の筆者ではあるが、この教え子の動きをたどっていると、中国の時勢が逆に読み取れる。

このように不動産業者だけでなく、主として政府関係者が住宅を買い占めてはそれを転売して金儲けをするために、住宅価格が高騰し、一般庶民が「住むための住居」を購入できなくなるという情況をもたらしていた。住宅を購入できる程度の一定の富裕層あるいは中間層が不満を抱くことを中国政府は非常に恐れる。

そのため中国政府は2010年に「住宅購入制限令」を発布し、二軒以上の住宅を商売用(転売用)に購入してはならないという制限を設けた。それも地域によって制限の仕方が異なり、「購入しにくくさせた」という表現の方が正確だろう。

全国を「華北、華東、華南・・・・・・」などに分けて、北京市、上海市など48都市に制限を設けた。遼寧省に関しては「瀋陽市」と「大連市」しか対象となっていなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-FRB、シティへの改善勧告を解

ビジネス

英、金融指標の規制見直し 業界負担を軽減

ワールド

韓国、ウォン安への警戒強める 企画財政相「必要なら

ワールド

米、台湾への新たな武器売却承認 ハイマースなど11
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中