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スペースXが開発中の有人宇宙船を公開 今年末にも宇宙飛行士を打ち上げへ

2018年6月7日(木)18時30分
鳥嶋真也

民間の宇宙船が完成するまで、ISSへの宇宙飛行士の輸送はロシアの宇宙船を利用するしかない。しかもロシアは、この状況を好機と捉え運賃を釣り上げており、NASAはしぶしぶその金額を呑まざるを得ない状況にある。

いっぽうのスペースXにとっては、これ以上の遅れを出すことは許されず、現在の同社にとって、クルー・ドラゴンの開発と、それに合わせたロケットの改良は最優先事項になっている。かといって、急ぎすぎて安全性をおろそかにすれば大惨事につながる。同じく開発が遅れているボーイングのスターライナーも同様である。

NASAにとっても、またスペースXとボーイングにとっても苦しい状況にあるが、この困難を乗り越えられなければ、同社や宇宙開発の未来は、やや暗いものになってしまうだろう。

NASAは宇宙飛行士の輸送を民間に委託することで、浮いた人員や予算を、月探査や火星探査などに振り分けようとしている。さらに、スペースXのような企業を育成することで、宇宙産業を自立させ、宇宙の利用をさらに手頃で自由なものにするという狙いもある。民間の宇宙船が成功しなければ、こうした目論見は瓦解する。

さらに、スペースXにとって真の目的は火星への人類移住であり、クルー・ドラゴンの開発でいつまでも足踏みしている場合ではなく、これを糧に、できる限り早く、次の新型宇宙船の開発に進まなくてはならない。

クルー・ドラゴンとスターライナーの開発の遅れは、人類の宇宙進出にとって必要な"産みの苦しみ"といえるのかもしれない。

SpaceX Dragon V2 | Unveil Event

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