最新記事

アメリカ外交

お騒がせな在独アメリカ大使、着任そうそう大使の送還を求める声

2018年6月13日(水)17時20分
モーゲンスタン陽子

5月に着任した在独アメリカ大使リチャード・グラネル Stringer-REUTERS

<今年5月に就任したばかりの在ドイツアメリカ大使、リチャード・グラネルが就任以来何かと物議を醸している>

今年5月に就任したばかりの在ドイツアメリカ大使、リチャード・グラネルはトランプ大統領の右腕とも目される人物だ。就任以来何かと物議を醸しているが、今月初めに欧州の右派勢力の増勢に協力したい考えを示し、ドイツの有力政治家が反発、大使の送還を求める声が強まっている。

ホワイトハウスは大使の発言を擁護。グラネルも強気の姿勢を見せていたが、G7でアメリカと、カナダはじめ他国間との緊張が高まったためだろうか、態度を軟化。また、12日に予定されていた、右派として知られるオーストリアのセバスティアン・クルツ首相との会合を土壇場でキャンセルした。

トランプ式「保守」はヨーロッパでは「極右」

就任1ヶ月にも満たない今月初めグラネルは、右翼系ニュースサイト、ブライトバートのインタビューで、「ヨーロッパ中のコンサバティブ勢力を何としても力づけたい」と発言。「コンサバティブ:保守」という言葉を用いてはいるが、ヨーロッパの現状を「左派の政策の失敗」と表し、またドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)への言及はないものの、極右の自由党と連立政権を組むオーストリア国民党のクルツ首相を「ロックスター」と英雄視していることから、この発言は欧州の極右・反体制派を支持するものとして、ドイツでは大きな反発を招いた。

ドイツ国際公共放送ドイチェ・ウェレ特派員はポリティコ誌に、グラネルはドイツに対する脅威であると寄稿。外国人排斥や「偉大な」国への回帰を掲げるトランプ式コンサバティブはヨーロッパでは「極右」にあたると指摘。Making Germany Great Again に最も力を入れているのはAfDだ。

左翼党の共同党首サラ・ヴァーゲンクネヒトは「米大使リチャード・グラネルのような人が、誰がヨーロッパを統治するしないについて領主のように指示できると思っているなら、もはや外交官としてドイツに留まることはできない」と反発(ガーディアン)。

中道左派の社会民主党(SPD)のマルティン・シュルツ前党首も、「ワシントンのドイツ大使が、民主党をサポートするためにそこにいるなどと言ったなら、すぐさま追放されるだろう」と述べる(ザ・ローカル)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中