最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮を狙う経済開発勢力図

2018年6月11日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

金正恩(キム・ジョンウン)委員長 KCNA/REUTERS

米中韓露各国はすでに米朝首脳会談の成功を見込んで、北朝鮮の経済開発への投資競争の準備に入っている。中国の投資領域が最も大きいが、中朝は激しい葛藤を抱えている。アメリカは北をカードに対中牽制ができるか?

金正恩が描く投資競争勢力図

現状では、日本を除いた「米中露韓」各国は、米朝首脳会談がうまく行った場合の自国の勢力と存在感を最大化するために、すでに着々と準備作業に入っている。中露が北朝鮮側に付くだろうことを想定して、金正恩(キム・ジョンウン)委員長はアメリカに近づき、中露を刺激して投資競争を行なわせようとしている。韓国は放っておいても対北融和政策で自ら近づいてくることは分かっている。

そこで、現状における勢力図と、とりわけ中朝が抱えている葛藤を見てみよう。

中国と約束した4大拠点

5月7日~8日における第2回目の中朝首脳会談で、金正恩委員長は習近平国家主席に以下の4か所を拠点とする経済協力を要請したことがわかった。

1.平壌(ピョンヤン)のインフラ建設

2.西海岸の南浦港(ナムポハン)(ピョンヤンよりやや南)

3.中朝国境地帯の新義州(シンウィジュ)と黄金坪(ファングムピョン)・威化島(ウィファド)

4.東海岸の清津(チョンジン)港(北端に近い港)

「3」の新義州開発区は今年5月2日のコラム<「中国排除」を主張したのは金正恩?――北の「三面相」外交>や5月7日のコラム<中国、対日微笑外交の裏――中国は早くから北の「中国外し」を知っていた>に書いたように、中朝の利害が衝突してきた経済開発区で、何度も失敗している。

そこに再挑戦するのは冒険だが、今度は中国としてもアメリカに負けられないという思いがあるし、北朝鮮としては最初からアメリカと競争させて、何としても非核化による損失の埋め合わせをしなければ国家存亡に関わるので、真剣度がこれまでと違うだろう。

注目すべきは咸鏡南道(ハムギョンナムド)の端川(ダンチョン)市を中心とした豊富な地下資源埋蔵地域の開発投資を、どうやら中国と検討しているらしいということだ。

北朝鮮の経済開発の主たる価値はレアメタルやレアアースなどの地下資源にあり、その埋蔵量は広大な中国大陸を遥かに上回るとされている。世界のレアメタルやレアアースの約90%を中国が独占していたが、種類によってはその10倍以上の埋蔵量があの狭い北朝鮮の地下に眠っていると予測されていることから、各国の目の色が変わる一因ともなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

J&J、1─3月売上高が予想届かず 医療機器と主力

ビジネス

米BofA、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行

ビジネス

HSBC、アジア投資銀行部門で10数人削減 香港な

ワールド

トランプ氏、経済運営ではバイデン氏より高い評価=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    【画像・動画】ウクライナ人の叡智を詰め込んだ国産…

  • 10

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中