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日本外交

北朝鮮との間で拉致問題を抱える日本のジレンマ

2018年6月5日(火)17時00分
辰巳由紀(米スティムソン・センター日本研究部長、キャノングローバル戦略研究所主任研究員)

しかし、ほかの関係国は日本よりはるかに速いペースで進んでいるのだ。南北朝鮮の間だけでなく、アメリカと中国、中国と韓国の協議も加速しており、マイク・ポンペオ米国務長官は3月(当時の肩書はCIA長官)と5月に相次いで平壌を訪れ、金と会談している。

もちろん、日本の影響力が全くないわけではない。例えば、日本の民間部門の核燃料再処理技術は、北朝鮮の核施設の廃棄プロセスにおいてかなり有用だろう。しかし、そのような影響力を発揮する前提として、日本政府は拉致問題最優先という方針を修正する必要がある。

拉致問題に関する政府の立場を左右するような方針転換は、安倍にとって特に難しい決断となる。拉致問題に断固として立ち向かうという姿勢は、安倍が政治的に台頭したきっかけの1つだからだ。

しかし、安倍が決断できるかどうかによって、北朝鮮の非核化と、将来的には朝鮮半島統一に向けて、日本がどこまで影響力を振るえるかが決まるかもしれない。

本誌2018年5月29日号「特集:交渉の達人 金正恩」から転載


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