最新記事

貿易戦争

G7サミット、「貿易戦争」めぐり米国と6カ国の対立表面化か

2018年6月6日(水)13時09分

6月4日、8─9日にカナダで開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、トランプ米大統領の経済と外交に関する一連の言動を受け、米国とその他6カ国に分断されている構図が見込まれる。写真は5月、議長を務めるカナダのトルドー首相(2018年 ロイター/Chris Wattie)

8─9日にカナダで開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、トランプ米大統領の経済と外交に関する一連の言動を受け、「米国とその他6カ国」という分断の構図が見込まれている。

それだけに議長を務めるカナダのトルドー首相は、G7の結束を維持するために相当な努力を払わなければならない、と関係者や専門家は口をそろえる。

フランスのルメール財務相は1日、G7財務相・中央銀行総裁会議前の会見で「G7が示す事態は、米国が他のすべての国、とりわけ同盟国から孤立しているということだ」と語った。

トランプ氏が外交におけるデリケートな部分を軽視し、「米国第一」を掲げたことで、冷戦期から築かれてきた同盟国との関係に亀裂が生じた。同氏が欧州連合(EU)諸国やカナダを激高させたのは、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限とイラン核合意からの離脱宣言だった。日本は、米国が頭越しに北朝鮮との関係改善を進めることを懸念している。

実際2日に終わったG7財務相・中央銀行総裁会議も、6カ国が米政府の鉄鋼輸入制限を非難する議長総括を公表した。

対立表面化も

トルドー氏は、サミットで対立が生じるとの見方を一蹴。5月24日のロイターのインタビューで「こうした疑念は毎度浮上してくる」と述べた上で、G7は「同じ考えを持つ国が集まって共通の課題を話し合う機会なので、ことさら価値がある」と強調した。

ただトルドー氏の最初の外交アドバイザーを務めたオタワ大学のローランド・パリス教授(国際関係)はもう少し厳しい見方をしており、「サミットの一番の課題はG7自体の一体性を保つことになる」と指摘する。

パリス氏によると、各国首脳は立場の違いをうまく取り繕うというのが最もあり得るシナリオだが、足並みの乱れがより表面化してくる可能性も現実味があるという。

元米国務省高官で米戦略国際問題研究所(CSIS)のヘザー・コンリー氏は、貿易問題を巡る対立によって各国首脳が他の問題に焦点を当てるのは難しくなるとみている。

8日には各国首脳が従来通り貿易に関する議論をする予定。トルドー氏とEUは、米国の鉄鋼・アルミ輸入制限を批判しているだけに、緊迫感が高まるのは間違いない。

あるカナダ政府高官も、今年のサミットが例年よりずっと難しい事態になる恐れがあると認めた。

一方、米国家安全保障会議(NSC)のある高官は、トランプ氏がサミットで「公正かつ相互的な貿易」という自身の主張を改めて展開するとの見通しを示した。

米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は通商面でのあつれきを家族間の口論にたとえており、1日には記者団に「これは解決可能な事案だ。私は楽観主義を信奉している」と話した。

(David Ljunggren、Roberta Rampton記者)

[オタワ/ワシントン 4日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

UPS機が離陸後墜落、米ケンタッキー州 負傷者の情

ワールド

政策金利は「過度に制約的」、中銀は利下げ迫られる=

ビジネス

10月の米自動車販売は減少、EV補助金打ち切りで=

ワールド

ブリュッセル空港がドローン目撃で閉鎖、週末の空軍基
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中