最新記事

韓国事情

韓国、労働時間を短くする法改正で禁煙率が高まる...はホント?

2018年5月31日(木)17時30分
佐々木和義

写真は仁川空港の喫煙ルーム Dobino-iStock

<韓国の労働時間を短縮するという労働法改正によって禁煙率が高まる、という予想の理由は...>

韓国では、2018年7月から導入される勤労基準法改正法が喫煙率の低下に繋がるのではという予測がある。労働時間の短縮を規定した改正法と喫煙率にどんな関わりがあるのだろう。

2005年に51.6%だった韓国の男性喫煙率は2015年には40%を切る39.4%となったが、依然としてOECD加盟国の中でギリシャに次ぐ2番目に高い水準で、韓国保健福祉部(部=省に相当)は、2020年までに29%とするという数値目標を掲げている。

飲食店を全面禁煙に

2012年にさかのぼるが、受動喫煙を減らすため、店舗面積150平米以上の飲食店を原則禁煙とした。喫煙室がある店は容認されたが、煙が禁煙スペースに流入しないようガラスや壁などで仕切り、屋外に直接排出させるなどの厳しい要件を課したため、喫煙室の設置はカフェなどごく一部にとどまった。

2015年1月にはすべての飲食店と公共建物を禁煙に。当初は喫煙客のゴリ押しで喫煙を容認する店もあったが、喫煙した客と飲食店の双方に罰金が課されるようになった同年4月以降、店内での喫煙はなくなっている。

そして、ソウル市も繁華街を中心に路上喫煙の禁止区域を拡大し、2016年5月からは地下鉄駅の出入口10m以内はすべて禁煙となっている。

さらに、2015年1月には、たばこの値上げを実施。これに合わせて、全国の自治体が運営する保健所に禁煙クリニックを設置した。無料でカウンセリングを行い、禁煙補助治療剤(ニコチンガム、パッチ)などを無料で提供する。同2月からは民間病院が運営する禁煙クリニックにも補助を拡大している。

増税に伴う値上げで1箱2500ウォンのたばこが4500ウォン(約450円)になり、成人喫煙率は2014年の24.2%から2015年には22.6%まで低下、男性喫煙率も43.2%から39.4%まで下がったが、翌16年には男性喫煙率40.7%、成人喫煙率23.9%と微増しており、税収も増えている。

韓国・ハンギョレ新聞によると、政府は値上げから1年を経過した2016年のたばこの販売数を2014年の43億5千万箱と比べて34%減少すると目論んでいたが、実際は16%減の36億6千万箱で、たばこ税収は値上げ前の6兆9千億ウォンから12兆3千億ウォンに倍増しているという。たばこ販売最大手のKT&Gも純利益が2014年の7470億ウォンから1兆873億ウォンに増えている。

労働法改正は禁煙につながるのか

では、2018年7月から導入される勤労基準法改正法と喫煙率にどんな関わりがあるのか。

韓国では公共建物内での喫煙が禁止されており、オフィルビル等に勤務する喫煙者は、ビル外に設置されたスペースでのみ喫煙が可能で、ビルを出入りする際に使用するセキュリティカードが勤怠管理に利用されはじめている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中