最新記事

米国のイラン核合意離脱、中国に漁夫の利? 人民元建て原油取引後押しの可能性

2018年5月11日(金)11時50分

5月10日、米国の対イラン制裁再開を受けて、中国は世界最大の原油輸入国の立場を利用して人民元建てで原油を輸入することをイランに要求することが可能となり、中国が受ける恩恵は大きいと専門家は指摘する。写真はオイルタンク。上海で3月撮影(2018年 ロイター/Aly Song)

米国の対イラン制裁再開を受けて、中国は世界最大の原油輸入国の立場を利用して人民元建てで原油を輸入することをイランに要求することが可能となり、中国が受ける恩恵は大きいと専門家は指摘する。

米国の対イラン制裁は、イランの石油貿易を抑制することが狙いだが、中国を含め多くのアジア諸国は引き続きイランから原油を輸入するとみられている。

原油価格の国際指標となる北海ブレント原油先物とWTI原油先物はドル建てで取引されている。中国が人民元建てでイランから原油を輸入すれば、貿易決済における人民元の利用が増え、それにより基軸通貨としてのドルの地位に影響が及ぶ可能性がある。また、中国はドル建てで原油を輸入した場合に生じる換金手数料を節約できる。

コロンビア・スレッドニードルのシニアアナリスト、Edward Al-Hussainy氏は、今後イランの輸出やイランへの海外からの投資は減少が見込まれると指摘。それによりイラン経済は打撃を受けるが、世界の原油取引がドルを支える重要な柱となっていることを踏まえると、ドルの流動性にとっても打撃になるとの見方を示した。

今年3月には上海先物取引所傘下の「上海国際エネルギー取引所」で、人民元建ての原油先物取引が始まった。WTIや欧州の北海ブレントが原油取引の国際指標となっている現状に中国が対抗する狙いがあるとみられる。また、関係筋によると、中国当局は原油の輸入決済をドルから人民元に切り替える準備に着手した。

これらは、人民元の国際化に向けた中国当局の取り組みの一環といえる。

[ニューヨーク 10日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:プライベートデット拡大へ運用会社買収

ワールド

ウクライナのNATO加盟断念、和平交渉に大きく影響

ワールド

米ブラウン大銃撃、当局が20代の重要参考人拘束

ワールド

中国、「持続可能な」貿易促進 輸出入とも拡大と党幹
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中