最新記事

イラン核開発

イスラエル首相「イランは核合意に違反している」

2018年5月1日(火)18時00分
トム・オコナー

イスラエル国防省でイランが核兵器を持とうとしてきた「証拠」をプレゼンするネタニヤフ首相(4月30日) Amir Cohen-REUTERS

<トランプが定めたイラン核合意破棄のデッドラインを目前に、イスラエルのネタニヤフ首相がイランの「嘘」を暴く証拠書類を入手したと発表>

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4月30日、隠れて核開発を進めていたとイランを非難した。欧米による制裁解除と引き換えに、核兵器を作るためのウラン濃縮を制限すると約束したイラン核合意に背いた、というのだ。

ネタニヤフは特別記者会見を開き、イスラエルは、イランの核兵器開発計画についての極秘データを大量入手したと述べた。ネタニヤフはスライドを使ってプレゼンテーションを行い、イランが核兵器開発計画「プロジェクト・アマド(Project Amad)」を密かに進めていたと主張した。

これは、ミサイルへの搭載が可能な、爆発規模10キロトンの核弾頭5つを「設計し、製造し、試験」することを目指すプロジェクトだ。ネタニヤフは、その計画の証拠となるイランの原子力関連記録の「コピー」が10万部あると主張した。

「これらのファイルは、核兵器を開発しようとしたことはないとイランが堂々と嘘をついていることを示す決定的な証拠だ」とネタニヤフは述べた。

「イランは合意後もなお、将来のために核兵器開発プログラムを継続・拡大していた」とネタニヤフは続けた。「核合意は虚偽にもとづいている。イランの嘘と裏切りの上に成り立っているのだ」

イランは世界を欺いてきた?

イスラエルはこれらの書類について、「核兵器を開発しようとしたことは一度もない」というイランの主張が嘘であること、イランの都市、ゴム近郊にあるフォルドウ・ウラン濃縮施設でプロジェクト・アマドを継続していること、2016年1月に核合意が履行される前の2015年12月に、核開発に関して国際原子力機関(IAEA)に嘘をついたことを示していると述べた。

ネタニヤフはまた、現在の核合意は、イランの核兵器開発を阻止する上で不十分だとしている。

イスラエルはこれまで、イランは核兵器の開発を目指していると繰り返し非難してきた。それに対してイランは、核開発は平和利用のためだと主張。イランのハサン・ロウハニ大統領とバラク・オバマ米前大統領が合意に至った後、欧米諸国は、イランに科してきた重い制裁を徐々に縮小している。

ドナルド・トランプ大統領は2016年のアメリカ大統領選挙中、イラン核合意に対する保守派の憤りにおもねるかたちで、合意を破棄すると公言していた。また、イスラエルやサウジアラビアと同様、イラン核合意について深い懸念を抱いており、イランは核開発を極秘に継続しているのではないかという疑いを表明している。

また、イランは凍結されていない資産を、結びつきの強いシーア派武装組織への支援や、弾道ミサイル開発のために注ぎ込んでいる可能性もあると疑っている。そうした行為は、現在の核合意の規制対象には含まれていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

財政政策が日本国債格付けのリスク、参院選後の緩和懸

ワールド

インドネシア中銀、0.25%利下げ 米との関税合意

ビジネス

アングル:円安への備え進むオプション市場、円買い介

ビジネス

英6月CPI、前年比+3.6% 24年1月以来の高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 10
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中