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北朝鮮、中朝共同戦線で戦う──「紅い団結」が必要なのは誰か?

2018年4月12日(木)12時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

これらから何が読み取れるのか――。

中共中央対外聯絡部の宋濤部長の動き

昨年11月17日に中共中央対外聯絡部の宋濤部長が習近平総書記の特使として訪朝したことは2017年11月20日のコラム「北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側」で書いた。その時に、「中国は米朝首脳会談をさせることをもくろんでいるだろう」とも予測した。

その予測は的中し、中国は北朝鮮を動かして(時には威嚇して)、対話路線へと傾かせていくことに成功した。

中共中央対外聯絡部の宋濤部長を派遣したのは、中国共産党の「党大会の報告」を、同じ社会主義国家の朝鮮労働党にするためだと中国は説明している。

しかし、それだけだろうか?

そうではない証拠に、金正恩委員長が秘密裏に訪中した時の特別列車(1号列車)に、実は宋濤部長が乗っていたのである。

宋濤部長訪朝の際に、中朝両国とも「宋濤は金正恩に会えなかった」と公表はしている。本当に会っていないのかに関しては疑問だ。少なくとも、宋濤帰国後に、中朝は水面下で交渉を続けていなければ、3月26日の北京行きの特別列車に、金正恩とともに宋濤が乗っているなどということはあり得ない(宋濤は丹東から乗り込んでいる)。しかも北朝鮮が公開した列車内の映像(上掲写真)から見るに、宋濤は金正恩の真正面に座り、実に親しげに談笑している。北朝鮮が発表した映像の中には、二人がにこやかに握手している場面もある。

おまけに宋濤は、中国芸術団を率いて、金正恩の祖父である金日成(キム・イルソン)(元主席)の誕生日(4月15日)を祝う祭典に参加するため、13日に平壌を訪れることになっている。国務院(中央政府)系列の外交部でもなければ国家副主席でもなく、中国共産党系列の対外聯絡部であるということが重要なのだ。

対外聯絡部は、今では中国国内を対象とするようになった中共中央統一戦線工作部(1937年成立)の対外版であると位置づけることができる。外国の政党を、中国共産党に結び付けて「統一戦線」を組もうというのが目的だ。

日本人には馴染みはないだろうが、このことがとてつもなく重要なのである。

「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」との整合性

昨年10月に開催された第19回党大会で「習近平思想」が党規約の冒頭に書き込まれることが決議された。具体的には「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という名の「習近平思想」だ。この長いフレーズの最初の「習近平」と最後の「思想」が、表面的には重要だが、もっと深読みすれば、実は「社会主義思想」の部分がさらに重要だという要素が潜んでいる。

すなわち、一党支配体制を維持させるために、「社会主義思想」の正当性を中国人民に強調して示していくという目的が秘められているのである。

どの国であれ、独裁が長く続けば、必ず権力の腐敗が起きる。

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