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一帯一路

インドを捨てて中国に近づくモルディブの政治危機

2018年4月4日(水)15時50分
ロバート・マニング(大西洋協議会上級研究員)、バーラト・ゴバラスワミー(大西洋協議会南アジアセンター所長)

ヤミーン大統領は、中国がモルディブの16の島を開発やインフラ整備で収奪することを容認している。さらに17年12月には中国の習近平(シー・チンピン)国家主席と会談し、自由貿易協定(FTA)に署名。この件をめぐる国会審議はわずか1日だった。

強硬な政治手法に世論の反発が強まるなか、モルディブ最高裁は18年2月、ヤミーン政権と対立していたナシード前大統領(現在はイギリスに亡命中)を含む政治犯9人の赦免を命じた(後に撤回)。するとヤミーンは非常事態宣言を発令し、最高裁長官らの身柄を拘束した。

こうしたやり方に、国際社会からは民主主義への攻撃だと懸念する声が上がっている。インドも怒りを募らせ、ナシードはモルディブへの軍事介入をインドに求めている。

一帯一路プロジェクトでインド洋沿岸の国々に港湾を整備し、膨大な債務を盾に自国の影響力を強めていく――中国のやり方には明確なパターンがあり、モルディブはその最新の一例にすぎない。インド・太平洋地域におけるインドと中国の覇権争いは今後、ますます熾烈になりそうだ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年4月3日号掲載>

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