最新記事

テクノロジー

金融界が期待するブロックチェーン技術 米国で「夢と現実の差」露呈

2018年4月2日(月)14時38分

3月27日、米金融業界では、仮想通貨それ自体よりも土台となるブロックチェーン技術に対する期待が高い。しかし同技術を活用する世界的なプロジェクトがここにきて相次いで棚上げされ、夢と現実のかい離が露呈している。写真は2015年撮影(2018年 ロイター/Sigtryggur Ari)

米金融業界では、仮想通貨それ自体よりも土台となるブロックチェーン技術に対する期待が高い。しかし同技術を活用する世界的なプロジェクトがここにきて相次いで棚上げされ、夢と現実のかい離が露呈している。

ロイターの取材によると、棚上げされた中にはデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション(DTCC)、BNPパリバ、SIXグループがそれぞれ主導したプロジェクトが含まれる。

金融業界では、ブロックチェーンが既存のインフラに取って代わり、証券や支払いの処理が迅速化、低コスト化するとの期待が高く、数年前に試験的なプロジェクトがいくつも立ち上がった。しかし企業は今、コストや業界の準備不足などさまざまな理由でプロジェクトから撤退し始めている。

DTCCの責任者マレー・ポズマンター氏によると、同社は最近、ブロックチェーンに基づくレポ取引の清算・決済システムの開発を中止した。

このプロジェクトは新興企業デジタル・アセット・ホールディングス(DA)と提携し、立ち上げには成功した。しかし銀行その他の潜在的ユーザーの反応は、既存技術を使えばもっと低コストで同じことができるというものだった。「先に解決策ありきで問題を探そうとする結果になってしまった」という。

スイスの証券取引所を運営するSIXグループの一部門、SIXセキュリティーズ・サービシズも、DAが試作した証券処理システムの実用化見送りを決めた。広報担当者は「別の方向に進みたいと考えた」と説明する。

BNPパリバは2016年、複数の新興企業と組んで未公開企業の証券管理のためのプラットフォームを構築すると発表していた。しかし関係筋によるとこれは中止され、提携相手を変えて別のブロックチェーン・プロジェクトに取り組む計画だという。

また、ロイターは先週、JPモルガン・チェースが内部で開発を進めているブロックチェーン技術「クォーラム」のスピンオフ(分離・独立)を検討していると報じた。

DTCC、BNP、SIXのプロジェクトはいずれも鳴り物入りで導入されたものだ。

技術助言会社ポスト・オーク・ラブズの創業者ティム・スワンソン氏は、多くの業者やコンサルタント会社がフィンテック関連の催しでぶち上げた計画通りには事が進まなかったと指摘。「問題の大部分は期待の管理、というかその欠如だった」と述べた。

ただ、前進を続けているプロジェクトもある。DTCCのポズマンター氏は「この技術には今でも強気だ」と発言。DAとの間で別のプロジェクトを検討中であり、来年にはブロックチェーンに基づく取引情報管理システムを導入するため、間もなく試験を行うと説明した。

(Anna Irrera記者 John McCrank記者)

[ニューヨーク 27日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB期間を8月1日まで延長 

ワールド

トランプ政権、不法移民の一時解放認めず=内部メモ

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に失望表明 「関係は終わって

ワールド

豪中銀、カード決済に課されるサーチャージの廃止を提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中