最新記事

日米首脳会談

北朝鮮情勢は動く、日本抜きで

2018年4月27日(金)15時00分
辰巳由紀(米スティムソン・センター日本研究部長、キャノングローバル戦略研究所主任研究員)

トランプと「相思相愛」のはずだった安倍だが Kevin Lamarque-REUTERS

<「ドナルド・シンゾー」の仲に隙間風が? 動き始めた朝鮮半島情勢で日本は取り残されるのか>

安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領は、17日から2日間にわたる日米首脳会談を終え、米東部時間18日午後6時過ぎから40分余り共同記者会見を行った。前半は北朝鮮問題が、後半は経済・通商問題が主に議論された首脳会談だった。

安倍にとって今回の会談は、過去にトランプとの間で行われたどの会談とも違う雰囲気の中で行われた。トランプとの個人的関係が強調され、北朝鮮情勢のような日米の立場が近い問題が前面に出たこれまでとは異なり、日本にとって厳しい状態の経済・通商分野の問題も主要な議題に上った。

北朝鮮問題でも、会談1日目にマイク・ポンペオCIA長官の極秘訪朝が明らかになり、さらにトランプが北朝鮮との包括的合意を目指すと報じられるなか、その内容が何なのか不透明なまま会談を迎えた。

それでも、会談の雰囲気そのものは決して悪くないように見られた。18日夕方の共同記者会見を含め、両首脳が今回、そろってメディアの前に姿を現したのは計4回。その全てでお互いの親しい個人的関係、そして日米関係の緊密さが強調された。

しかし会談は、日本側にとって失敗とまではいかなくとも厳しいものだったと言わざるを得ない。結果を見れば、日本側が得たものは極めて少ないからだ。

北朝鮮問題では「完全、検証可能かつ不可逆的な非核化」が最優先課題であることについて意見の一致を見た、と強調された。またトランプが米朝首脳会談で拉致問題について言及することを約束したことをもって「成果あり」とする評価もある。

だが、トランプが約束しているのは米朝首脳会談の場で拉致問題に「言及する」ことだけだ。実際、質疑応答で「北朝鮮の非核化と拉致問題を同列に重要なものとして扱うのか」と問われたトランプは、「この問題はシンゾーにとって重要な問題だ。シンゾーにとって重要な問題は私にとっても重要だ」と答えるにとどまっている。

つまりアメリカに日本が確実に期待できることは、米朝首脳会談の際にトランプが拉致問題について、解決されなければならない問題の1つとして言及することだけ。日本が現在直面する、より直接的な北朝鮮からの脅威である短・中距離ミサイルをどうするかについてトランプとの間でどのような議論が交わされたのかは不明なままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中