最新記事

SNS

フェイスブックは個人情報悪用の張本人

2018年3月29日(木)18時15分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

ザッカ―バーグのフェイスブックはアメリカの歴史を変えたのかもしれない Robert Galbraith-REUTERS

<フェイスブックに登録した個人情報の第三者による不正使用が発覚――しかし問題の本質はフェイスブックのビジネスモデルそのものにある>

英ビッグデータ分析会社のケンブリッジ・アナリティカが14年に、フェイスブックのユーザーとその「友達」約5000万人分の個人情報を「研究目的」と称して取得し、「心理学的属性」を分析したという。それが16年の米大統領選挙でドナルド・トランプ陣営に利用されたかもしれない。イギリス政府は捜査に乗り出し、規制強化を求める声が高まり、フェイスブックの株価は問題発覚直後の3月19日に7%近く下落した。

しかし、この事件でフェイスブックが罪に問われたわけではない。個人情報の扱いに関する同社のポリシーが問われているわけではないし、同社の従業員が不正行為を働いた形跡もなく、そもそも大統領選挙にどれほどの影響を及ぼしたかも不明だ。

本件における同社の関与の度合いを考えれば、フェイスブックに向けられた世間の怒りは大き過ぎると思われるかもしれない。しかし怒るべき理由は別にある。フェイスブックが「誰に対しても」同様の行為を許していること、言い換えれば膨大なデータを売って稼ぐビジネスモデル自体が問題なのだ。

14年にケンブリッジ・アナリティカの依頼を受けて、ケンブリッジ大学の研究者アレクサンドル・コーガンは自身の作成した性格分析アプリを使ってデータを集めたわけだが、それを可能にしたフェイスブックの利用規約は一般に公開されており、よく知られている。

また同社の利用規約は非常に寛大で、アプリに登録したユーザーの「友達」のデータを開発者が収集することも許していた(問題発覚後に変更された)。

米紙ワシントン・ポストが指摘するように、ティンダー(デートアプリ)やファームビル(農園ゲームアプリ)のほか、12年の大統領選挙でのオバマ陣営も同じツールを使用して似たような情報を収集している。15年段階までは、これが同社の通常のビジネスだった。

コーガンの性格分析アプリを利用した人たちは、商業目的ではなく研究目的に使われると考えて個人情報の提供に同意していた(私見だが、フェイスブックはユーザーが「友達」の情報まで提供する行為を禁じておくべきだったと思う)。

フェイスブックによれば、規約違反が分かった時点で、コーガンとケンブリッジ・アナリティカに情報の破棄と、その確認を要請したという。ただしフェイスブック側に、本当に破棄されたかどうかを確認する方法があったかどうかは不明だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中