最新記事

米朝関係

北朝鮮の姿勢軟化は制裁の成果か、時間稼ぎか

2018年3月16日(金)15時30分
キース・ジョンソン、ダン・デ・ルース

「今こそ経験豊かな人材が必要なのに」と言うのは、米外交問題評議会シニアフェローで、ジョー・バイデン前副大統領の顧問を務めたイーライ・ラトナーだ。「相手の真意を見極められる外交手腕に優れた交渉団がぜひとも必要になる」

金の好戦的な性格や核・ミサイル開発に固執してきたこと、体制維持の必要性などを考慮しても「金の本心はつかみかねる」と言うのは、ランド研究所のブルース・ベネットだ。「あの男は1938年のミュンヘン会談で国際社会を欺いたヒトラーなのか、それとも本気で平和的解決を望んでいるのか」

トランプ政権のある高官は、北朝鮮の提案に懐疑的だ。アメリカ政府は交渉の扉を開いておくべきだが、北朝鮮が何度も約束を破ってきた事実を忘れてはならないという。「核兵器製造を続けるための単なる時間稼ぎなら、そうはさせない。こっちは何度も痛い目に遭わされてきたのだから」。また制裁はじわじわと効いているようなので、「交渉の一方で」制裁も続けるべきだと付け加えた。

過去1年間、米朝が互いに脅し、侮辱し、挑発し合ってきたことを考えれば、直接会談の提案が大きな変化なのは間違いない。だが北朝鮮側が和解の意思らしきものを示したのは、これが初めてではない。そのたびに期待は裏切られてきた。

しかし今回は韓国の特使団との会談の席で、金正恩が直々に対話を持ち出した。このことの意味は大きいとタウンは言う。それは「彼が先代や先々代とは違うことの証し」だ。

チャンスを逃すのは愚か

この急展開は韓国大統領の対話攻勢とトランプ政権の制裁強化の相乗効果だと、オバマ前政権の高官たちはみる。そして今回の対話提案は本気かもしれないと考えている。

「金正恩が本当に計算を変えた可能性がある。そこを確かめねば」とラトナーは言う。「いま私たちが聞いている話は、これまでに聞いた話と少しばかり違う。......トランプ政権がこれを無視したり、拒否したりするのは愚かなことだ」

もう1つの希望の光は、米韓合同軍事演習の実施を受け入れるとしていることだ。北朝鮮は従来、毎年の米韓演習を自国の体制転覆を狙った予行演習と決め付け、つい最近までは「反撃」の可能性も口にしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中