最新記事

米軍事

米F-35B、強襲揚陸艦で発着訓練 自衛隊導入予定の戦闘機は機動力がウリ

2018年3月26日(月)08時00分

 3月23日、米軍は最新鋭のステルス戦闘機「F35B」を強襲揚陸艦「ワスプ」上で運用する様子を初めて報道陣に公開した。写真は強襲揚陸艦「ワスプ」上で着陸態勢に入るステルス戦闘機「F35B」(2018年 ロイター/Issei Kato)

米軍は23日、最新鋭のステルス戦闘機「F35B」を、強襲揚陸艦「ワスプ」上で運用する様子を初めて報道陣に公開した。洋上に浮かぶ艦艇を発着拠点とすることで、F35Bは行動範囲が拡大。西太平洋から中東にかけた不安定な地域に、レーダーに映りにくい第5世代戦闘機が機動的に展開可能となる。

「F35B、帰還。第7発着ポイントに着艦する」──。沖縄本島の東方沖に展開するワスプ艦上にアナウンスが流れると、灰色の機体がジェットエンジンの轟音とともにゆっくり後方から進入してきた。甲板上に7と番号が描かれた地点の上で機体はしばらく静止、垂直に高度を下げながら、最後はストンと着陸した。

F35Bは、A・B・Cの3タイプあるF35戦闘機の1つ。短距離滑走で離陸、さらに垂直での離着陸が可能で、強襲揚陸艦のような小さめの甲板上や、短い滑走路で運用ができる。

米軍は今年3月、海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属のF35Bを海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)のワスプに合流させ、世界で初めて強襲揚陸艦での運用を開始した。

「歴史的な配備だ。F35Bと強襲揚陸艦を組み合わせることで、われわれの戦闘能力は大きく向上する」と、米海軍第7遠征打撃群のブラッド・クーパー司令官は艦上で記者団に語った。「この地域の平和と安定を維持するために必要な能力が強化される」と述べた。

陸上の基地に配備するF35Aは行動範囲が限られ、F35Cは巨大な空母で運用するため機動力が劣る。災害救援から戦闘まで、あらゆる事態に即時に対応するのが任務の強襲揚陸艦から発着可能なF35Bであれば、西太平洋から中東まで、広い範囲に素早く展開できる。

「ステルス性を生かして北朝鮮や中国の奥深くまで入り、衛星では捉えきれない対空ミサイルや弾道ミサイルの移動式発射台などを見つけることができる」と、海上自衛隊の元一佐で、現在は笹川平和財団上席研究員の小原凡司氏は言う。「自分で破壊することもできるし、位置情報を(他の部隊と)共有して巡航ミサイルを撃たせることもできる」と話す。

米海兵隊の岩国基地は昨年11月、16機のF35Bの配備を完了。米海軍は今年1月、F35Bを運用できるよう改修したワスプを佐世保基地に配備した。4月1日から始まる米韓合同軍事演習にワスプが参加するとの一部報道があるが、米軍は「運用に関わることは一切答えられない」(米海兵隊のエド・トンプソン大尉)としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中