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習近平長期政権に向けた改憲の狙いは?――中国政府高官を単独取材

2018年2月26日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

第19回党大会でこの不文律を守りはしたものの、任期自身を撤廃してしまうのでは、不文律など無きに等しい。これも2022年の党大会では破ることになるだろう。

そこまでする習近平の目的は何なのか――。

確認しなくとも分かってはいるが、それでもこれは巨大な変化であり、中国の分岐点だ。日本にも影響してくる。

できるだけ中国の真意に迫りたい。そこで、中国政府高官に真意を聞いた。

以下、Qは筆者、Aは中国政府高官である。「個人的見解」として回答してくれた。質問したのは2月25日、深夜。( )内は筆者の注。

Q:中共中央は遂に憲法七十九条にある任期制限の文言を削除することを全人代に建議すると決めたようだが、これでは独裁政権になってしまうではないか?

A:一人が永遠に最高指導者の地位にあったら、すなわち「独裁」ということになるとでも言うのか?

Q:当然だ。習近平が、死ぬまで権力の座に就いていられるようにする目的は何か?彼は権勢欲が強いのか?

A:政権の最高指導者に権威がなかったら、その政権は終わる。そもそも中国共産党は永遠に執政権を求め続けるだろう。

Q:中国共産党は一党支配体制を永遠に続けたいと思っているということか?

A:そうだ。国家主席であるか否かは、あまり重要ではない。毛沢東は十年ほどしか国家主席ではなかった。しかし中共中央主席(現在の中共中央総書記)として絶対的な力を発揮して、終身、執政権を握ってきた。

Q:劉少奇が国家主席になったため、毛沢東は国家主席の職位は要らないとして撤廃していたから、例外ではないか?

A:例外とも言えるが、もともと中共政権においては中共中央総書記が実権を握っていた。国家主席の座など、実は飾りに等しい。あとは中央軍事委員会の主席であれば、国家主席の座など無くても国家は回っていくのだ。鄧小平を見てほしい。彼は国家主席にも中共中央総書記にさえなったことがない。ただ軍事委員会を掌握していただけだ。それでも絶大な力を持ち、改革開放を進めていった。国家主席なんて、飾りの職位だよ。

Q:それでも今般憲法を改正して、国家主席の任期制限を撤廃するのだから、それなりの目的があるはずだ。

A:形の上で整えただけで、中共中央総書記と中央軍事委員会書記になっていさえすれば、全権は握れる。

Q:それでも政府を掌握することは必要なはずだ。そうでなかったら、中国人民だって、「合法的な手続きなしに、一つの党によって政府が独占された」と思うのではないか?

A:それは全くその通りだ。だから正常な手続きとして憲法を改正するのは、むしろ法治を重んじていることになる。

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