最新記事

中国

習近平長期政権に向けた改憲の狙いは?――中国政府高官を単独取材

2018年2月26日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

終身制を目指す<紅い皇帝>習近平 Jason Lee-REUTERS

2月25日、中共中央委員会は憲法にある国家主席の任期に関する制限を撤廃する提案を全人代に提出することを決定した。習近平が長期政権を目指す狙いはどこにあるのかを中国政府高官に聞いた。

新華社が改憲内容を発表

中国政府の通信社「新華社」および中国共産党の機関紙「人民日報」は、それぞれ2月25日の電子版で「中国共産党中央委員会の憲法の部分的改正に関する建議」(以下、建議)を発表した。

昨年10月の第19回党大会で中国共産党の党規約冒頭に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義国家」を明記することが決まったが、中華人民共和国憲法の冒頭にも、同様の習近平思想を盛り込む改正案は早くから検討されていた。

しかしそういった機械的なことではなく、建議では最も肝心な憲法第七十九条にある「中華人民共和国国家主席、副主席は全国人民代表大会の毎期の任期と同じく、連続して二期を越えることは出来ない」という文言を削除すると決めたのである。

筆者はこれまで何度も、もし習近平が第三期も続投しようとするならば、憲法第七十九条を改正しなければならないと書いてきた。たとえば2016年10月25日付けコラム<習近平の「三期続投」はあるのか? (「習・李 権力闘争説」を検証するPart3)>などで詳細に論じている。

まさにこの七十九条の任期の制限をバッサリ削除すると建議することを中共中央は決定したのだ。

建議する先は3月5日から開催される全人代(全国人民代表大会)。立法機関だ。そこで審議し投票により賛否を問う。もちろん可決することは最初から分かっている。

となれば、いよいよ習近平の第三期続投どころか、彼が欲すれば永遠に国家主席の座に就いていることができるようになる。党規約にも中央軍事委員会規約にも「任期に関する制限」はない。

したがって習近平は、「中国共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席、国家主席」の最高職位に「望むなら生きている間、死ぬまで」就任していることができるということになるのだ。

習近平の目的は何か――中国政府高官を単独取材

これでは毛沢東と同じ、個人崇拝による完全な独裁政権が始まるだけだ。鄧小平は改革開放に当たり、二度と再び文化大革命のようなことが起きてはならないとして憲法を改正し、「国家主席に任期を設けた」のである。中共中央政治局常務委員に「70歳」という年齢制限を設けたのも、そのためだ。党大会が開催されるその年にピッタリ70歳という人はなかなかいないので、「七上八下」(67歳なら現役可、68歳なら引退)という不文律を設けて守らせてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳、日本時間16日午前4時30分から会談 終

ビジネス

米企業、債務拡大へ信用契約の柔軟化要求 ムーディー

ワールド

プーチン氏、米はウクライナ和平で「誠実な努力」 核

ワールド

ノルウェー中銀、政策金利据え置き 年内の利下げ視野
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 3
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ「衝撃の物体」にSNS震撼、13歳の娘は答えを知っていた
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    マスクの7年越しの夢...テスラ初の「近未来ダイナー…
  • 9
    「ホラー映画かと...」父親のアレを顔に塗って寝てし…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 6
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 7
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 8
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中