最新記事

ロシア疑惑

トランプ支持派と反対派の双方を、ロシアはなぜ支援した?

2018年2月22日(木)15時10分
ジョシュア・キーティング

ムラ―特別検査官のロシア疑惑捜査は何を明らかにするのか Tom Williams-CQ ROLL CALL/GETTY MAGES

<米政治を混乱させるためのプーチンの作戦が、ロシア疑惑の捜査を通じて見えてきた>

ロシア疑惑を捜査しているムラー特別検察官は2月16日、16年の米大統領選への不当な干渉を理由に、連邦大陪審がロシアの3団体とロシア人13人を起訴したことを明らかにした。

とりわけ衝撃的だったことの1つは、16年11月のトランプ大統領の当選直後、ロシア企業の「インターネット・リサーチ・エージェンシー」などがアメリカでトランプ支持派と反対派の両方のデモを支援していたとされていることだ。「被告人と共謀者たちは、米国民に成り済まし、トランプ次期大統領支持の政治集会を米国内で組織。一方で別の名義を使い、選挙の結果に抗議する集会も組織していた」という。

これは、ロシアが自国で行ってきたやり口を思い出させる。ロシアなど旧ソ連諸国では共産主義体制が崩壊して程なく、「政治テクノロジスト」が手腕を振るい、「管理された民主主義」を実践してきた。

民主主義国の世論操作や専制国家のプロパガンダとは性格が異なる。体制にとって好ましい候補者を支援するだけではない。既存の体制が権力を維持するために、対立勢力も含めた政治のストーリー全体をつくり上げようとするのだ。

偽の草の根運動を組織したり、政敵の評判を落とすための工作をしたりすることは、アメリカでも行われてきた。ニクソン元大統領の選挙運動に携わったロジャー・ストーン(後にトランプの顧問も務めた)は共和党内のライバルの評判を傷つける狙いで、社会主義系団体の名義で献金をするなどした。

しかし、ロシア政府のやり方は、もっと緻密で規模も大きい。ロシアのプーチン大統領の側近であるウラジスラフ・スルコフ補佐官は、今日最も有名な「政治テクノロジスト」だ。

国内政治と同様の手法

ジャーナリストのピーター・ポメランツェフは、スルコフの手法をこう説明する。「あるときは市民フォーラムや人権NGOに資金を流したかと思えば、次はひそかにナショナリスト団体を支援し、こうしたNGOが欧米の回し者だと批判させる」

ここ数回のロシア大統領選も、このような手法の下で行われた茶番だった。プーチン体制に対する「対立候補」は、あまりに弱々しく、実質的には体制に反対などしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米FTC、アップルニュースの左派系記事優遇巡る疑惑

ビジネス

ニコンが社長交代、大村CTOが昇格 徳成氏は会長に

ワールド

欧州産業界、エネルギー価格引き下げ要求 EUに緊急

ワールド

北朝鮮、金正恩氏の娘が後継者となる方向 政策関与の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中