最新記事

チベット

「ウイグル絶望収容所の起源はチベット」センゲ首相インタビュー

2018年2月21日(水)16時37分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

――しかしチベット人を取り巻く環境は年々厳しさを増している。国際社会における中国の発言力も増し、先日は、ダライ・ラマ法王の言葉を広告に引用した自動車メーカーのメルセデス・ベンツが謝罪に追い込まれた。

確かに中国は強大化している。私は最近、南アフリカを訪問したが、その際には現地中国大使館が抗議デモを組織するなど締め付けを強めている。

各国の政府、企業が中国政府の報復を恐れる状況は理解できる。ただ、チベット問題で譲歩すれば最後は皆さんにも跳ね返ってくることは理解していただきたい。

チベット問題、天安門事件、そして新疆と中国には多くの人権問題がある。それらについて口をつぐみ続ければ、そのうち自国に関する問題でも譲歩を余儀なくされる。

このリスクに気がついた国もある。一時期、中国と蜜月を築いたオーストラリアは現在、一転して中国のロビー活動が国内政治に影響しないよう防止する法案を提出している。

中国がどのような国なのか、それを知りたければチベットの経験を知る必要がある。チベットの悲劇を知らなければ中国の全貌はつかめない。

――昨年、ダライ・ラマ法王は日本訪問をキャンセルした。健康問題を抱えているのか。年内に高僧の会合が予定されていると聞くが、転生問題が話し合われるのか。

健康状態は良好だ。検査でもそう診断された。訪日キャンセルは過労を主治医が心配して忠告したためだ。ダライ・ラマ法王は83歳のお年なのだから、休み休み働くのは当然だ。

高僧会合は3年おきに開催されている定期的な会合だ。転生問題を含む多くの議題が話し合われる。ただ、転生と後継者の問題は法王に決定権があることは強調しておきたい。当然だが、中国政府に決定権はない。
 
転生とは過去のラマの使命とビジョンを新たなラマが受け継ぐことである。先代のラマが亡命の身であれば、次代のラマも亡命者から生まれてくるのが道理だろう。われわれとしてはチベット問題が解決し、法王が帰還されることを望んでいるが。

――共産党と亡命政府が水面下で接触している、という報道がある。

現在、秘密裏の公式な接触は行われていない。だから、いわゆる「大スクープ」はない。02年から10年の間、ダライ・ラマ法王の使いが中国とチベットを9回訪問した。訪問のたびに興奮が起き、さまざまな憶測が行われたが、結局何も起きなかった。

中国政府と対話することはわれわれの政策である。なぜなら、われわれは「中道政策(編集部注:独立でなく高度な自治権を求めるダライ・ラマの政策)」でチベット問題を解決したいからだ。

ダライ・ラマの使いが訪中するたびに、そのことを表明し、平和的な解決策のために話し合った。われわれは常に中国側の代表といつ、どこでも会う用意がある、と言っている。しかし、中国政府のほうからは返事がない。習近平(シー・チンピン、国家主席)の2期目には実現することを期待したい。

MAGAZINE

特集:日本と韓国 悪いのはどちらか

2019-9・24号(9/18発売)

終わりなき争いを続ける日本と韓国── 泥沼の関係に陥った本当の原因と「出口」を考える

人気ランキング

  • 1

    コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があることが発見される

  • 2

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

  • 3

    サウジのムハンマド皇太子、韓国に防空システム構築支援を要請

  • 4

    水深450メートル、メカジキに群がるサメ、そのサメを…

  • 5

    【速報】韓国の文在寅大統領、支持率が過去最低を記録

  • 6

    米軍戦闘機が撮ったUFO映像「本物」と米海軍が認める

  • 7

    北朝鮮船がロシアの国境警備艇を攻撃、日本海で多発…

  • 8

    【韓国政治データ】文在寅大統領の支持率推移(2019…

  • 9

    若年層の頭蓋骨にツノ状の隆起ができていた......そ…

  • 10

    ドイツはプライバシー保護を徹底 京アニ犠牲者の実…

  • 1

    コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があることが発見される

  • 2

    サウジ原油施設攻撃で世界は変わる

  • 3

    韓国航空会社の受難......ウォン安、原油高騰に「ボイコットジャパン」が追い打ち

  • 4

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいつ…

  • 5

    【韓国政治データ】文在寅大統領の職業別支持率(201…

  • 6

    嘘つき大統領に「汚れ役」首相──中国にも嫌われる韓国

  • 7

    水深450メートル、メカジキに群がるサメ、そのサメを…

  • 8

    韓国のインスタントラーメン消費は世界一、その日本…

  • 9

    サウジのムハンマド皇太子、韓国に防空システム構築…

  • 10

    9.11救助犬の英雄たちを忘れない

  • 1

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

  • 2

    嘘つき大統領に「汚れ役」首相──中国にも嫌われる韓国

  • 3

    日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう

  • 4

    ヒマラヤ山脈の湖で見つかった何百体もの人骨、謎さ…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 6

    コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があること…

  • 7

    「鶏肉を洗わないで」米農務省が警告 その理由は?

  • 8

    サウジ原油施設攻撃で世界は変わる

  • 9

    「TWICEサナに手を出すな!」 日本人排斥が押し寄せる…

  • 10

    韓国で脱北者母子が餓死、文在寅政権に厳しい批判が

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月