最新記事

韓国

ストレス過多の韓国人が逃げ込む「心の監獄」

2018年2月16日(金)15時15分
デーナ・ダビー

外界との連絡手段を遮断することで癒しが得られる? BsWei-iStock.

<超競争社会のストレスから解放されたい韓国人に「独房」を提供する施設が人気>

長時間のハードワークによるストレスに苦しむ韓国のビジネスパーソンが、一週間4700ドル超も払って殺伐とした「独房」に閉じこもっている。何もない簡素さが重要だ。利用者は、この部屋でストレスから解放され、「心の平穏」を見出すという。

まるで独房のようなこの部屋は、職場での忙しい生活から解き放たれるための避難場所だ。カナダのCBCテレビの報道によると、人気の瞑想プログラムの1つ「プリズン・インサイド・ミー」は北東部の洪川にある。施設には同じ形の部屋が28あり、部屋には窓が1つと小さなテーブルしかない。ベッドはなく、床暖房が効いている床の上で寝る。

利用者はこの部屋に閉じ込もって瞑想するように言われる。独房と違い、内側からカギを解除する方法を教えられ、緊急事態を知らせる「パニックボタン」も設置されているのだが。

利用者は最初に携帯電話をスタッフに預ける。外界との連絡手段をすべて遮断することで解放感を得られると、利用者もスタッフも口を揃える。

「この部屋は監獄ではない。本当の監獄は外界にある」と、施設の職員の1人はCBCの取材に話している。

韓国は世界でも長時間労働が深刻な社会と言われている。OECD(経済協力開発機構)の加盟35カ国中、韓国の労働時間は年間2069時間でトップのメキシコに次ぐ長さだ(日本は8位の1713時間)。

もちろん長時間労働は弊害を伴う。アメリカ心理学会は、仕事でのストレスが重なると「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を発症し、感情的な疲弊や、ネガティブな思考や態度に繋がる可能性がある。症状が長期間続けば鬱病に繋がることもある。

韓国は世界で最も自殺率が高い国の1つ。OECD加盟国中の自殺率はトップで、そのうち唯一自殺率が増加している国でもある。

監獄の利用者にとっては、この部屋の孤独と質素さが癒しとなる。

プログラムを最近利用したカン・スクウォンは「働き過ぎ、それがここに参加した主な理由だ」と、CBCの取材に語っている。「リフレッシュできたと思う。気持ちが軽い」

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ

ビジネス

ECB、米関税で難しい舵取り 7月は金利据え置きの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中