最新記事

ロシアゲート

トランプ「禁断の暴露」でFBIと本格バトルへ

2018年2月9日(金)16時00分
前川祐補(本誌記者)

ロシア通とされ、今後の捜査のキーマンとなる可能性があるページ Mark Wilson/GETTY IMAGES

<ロシアゲートでのトランプ包囲網が狭まるなか、公開を決めた機密文書と注目の人物とは>

2016年の米大統領選挙ではロシアがトランプ陣営と結託し、選挙に不正介入してトランプの勝利に加担したのではないか――いわゆるロシアゲートをめぐって、トランプ米大統領と司法省・FBIはつばぜり合いを続けてきた。

これまでのところ、独立捜査を率いるムラー特別検察官の優勢に見えていた。17年10月末に元トランプ陣営選対本部長ポール・マナフォートらを起訴。陣営の外交政策顧問だったジョージ・パパドプロスがFBIに対する偽証を認めて司法取引に応じたことも明らかになった。さらに今年1月、数週間以内にトランプ本人を聴取する計画も伝えられるなど、包囲網が形成され始めていたからだ。だが、このところ目につくのはトランプ側の反撃だ。

1月25日には、トランプが17年6月にムラーを解任させようとしていたことが発覚。このときは顧問弁護士に諭され矛先を引っ込めたとされるが、1月29日にはマケイブFBI副長官を事実上の辞任に追い込んだ。トランプは、マケイブの妻が15年のバージニア州上院選に民主党から出馬した際、クリントン元国務長官に近い政治団体から寄付を受けたことを理由にマケイブの政治的偏向を非難していた。

トランプは2月1日、新たな攻撃材料を手に攻勢に出たが、その手法をめぐり米政界が揺れている。トランプはFBIの捜査が反トランプに偏向していると指摘し、証拠となる下院情報特別委員会の機密文書を公開するとしたのだ。共和党が牛耳る議会もこれを承認し、ホワイトハウスもゴーサインを出した。

FBIは文書の公開に「深刻な懸念」を示し、司法省も危惧を表明した。野党の民主党も黙ってはおらず、そもそもこの文書は共和党が虚偽の内容を加えた「偽造」だと反論。トランプが捜査の信頼性を損ねさせ、ムラーを解任する口実に文書を使う恐れがあると指摘した。

結局、翌2日に文書は公開された。それは共和党議員の指示で作られ、ロシアゲートの捜査線上に浮上したカーター・ページという男をFBIが不正に盗聴・監視していたという内容だ。

プーチン系大学で講演も

FBIは捜査対象を通信傍受する権限を持つが、その際は外国情報活動監視裁判所に許可申請する必要がある。ただ共和党は、FBIがページに対する通信傍受令状を取得したとき、民主党が作成した反トランプの調査報告書を申請根拠としたことを問題視。実際、報告書作成には民主党の資金が一部使われており、令状の延長申請をした際にはこの事実を隠したとされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中