最新記事

朝鮮半島

北朝鮮の平昌五輪参加表明 金正恩の「真の狙い」は?

2018年1月8日(月)16時34分


ばかげた呼びかけ

韓国政府は表向き、正恩氏の発言を歓迎している。同国の文在寅大統領は、米韓の合同軍事演習を五輪後まで延期する可能性について言及しており、五輪開催前に北朝鮮との緊張を緩和しようと努めてきた。

文大統領は2日、南北関係の改善は、北朝鮮の核開発問題の解決と関連しているとも述べた。

米政府は、まだ詳細な対応を表明していない。だが共和党有力議員のグラハム上院議員は、北朝鮮が冬季五輪に参加するのであれば、米国は大会をボイコットすべきだと主張する。

「北朝鮮の冬季五輪参加を許すならば、地球上もっとも非合法な政府に正当性を与えることになる。韓国政府はもちろん、こんなばかげた呼びかけを拒否すると思うし、仮に北朝鮮が冬季五輪に参加するならば、われわれは参加しないと信じている」と同議員はツイートした。

同議員は過去にも、元米国家安全保障局(NSA)職員で、米当局の情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン氏の亡命をロシアが受け入れたことで、ソチ冬季五輪のボイコットを呼びかけたことがある。

北朝鮮選手団や職員が五輪に参加する図は、北朝鮮を国際社会の鼻つまみものとして位置付けてきた各国指導者にとって、居心地の悪いものになる可能性があると、韓国釜山大のロバート・ケリー教授は言う。

「北朝鮮の孤立に力を尽くしてきた米国や日本との間に緊張を生む可能性があり、韓国は微妙な立場に立たされるだろう」と同教授は指摘した。

日韓関係はすでに幾分ギクシャクしているとみられている。日本政府は韓国との関係に「疲れて」おり、文大統領に不信感を抱いていると日本の元外交官は説明する。

だがそれでも、金正恩氏の呼びかけによって、米韓の同盟関係や、対北朝鮮制裁強化による国際包囲網に、大きな傷がつく可能性は低いと専門家はみている。

「短期的に、世界的な経済・政治の孤立作戦が大きく転換されることはないだろう」と米シンクタンク外交問題評議会で米韓政策を担当するスコット・スナイダー氏は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アジア途上国の成長率予測を上方修正、インドの伸びが

ワールド

独首相が米安保戦略批判、欧州の自立促進呼びかけ

ビジネス

スペースXが来年のIPO計画、250億ドル超調達目

ワールド

米、中国軍のレーダー照射を批判 「日本への関与揺る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中