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平昌冬季五輪

平昌五輪を北朝鮮危機打開のきっかけにせよ

2018年1月4日(木)10時10分
トム・コリーナ(プラウシェア財団政策ディレクター)、キャサリン・キロー(同財団研究員)

外交はタイミングが全てだ。その点、平昌五輪は絶妙のタイミングで開かれる。17年11月29日のミサイル実験の後、金は「国家核武力の完成」を宣言した。「完成」したということは、米政府が譲歩すれば核・ミサイル計画を縮小する余地があるという意味なのか。話し合いの可能性を探る価値はある。

軍事演習の延期には反対意見もあるだろう。しかし、過去にアメリカは演習を取りやめたことがある。そのときも、抑止力が弱まったり、軍事的な即応体制が揺らいだりはしていない。92年には北朝鮮の核査察受け入れと、94年には北朝鮮の核開発凍結と引き換えに、米韓合同軍事演習を中止している。

米政府は再び、北朝鮮危機のエスカレートに歯止めをかける機会を手にしている。歴史をひもとけば、スポーツが対立国の橋渡しをした例は多い。70年代にニクソン元大統領の訪中に至る米中雪解けのきっかけになった「ピンポン外交」もそうだったし、数十年間も関係が断絶していたアメリカとイランの緊張緩和をもたらした13年の「レスリング外交」もそうだった。

米朝間でも、アメリカの元NBA選手らが北朝鮮を訪問して親善試合を行い、金との面会もしている。これは、米外交官が誰一人成し遂げていないことだ。

北朝鮮危機の平和的な解決に向けて残されている外交上の選択肢は多くない。米政府は五輪という絶好の機会を逃さず、対話への道を切り開くべきだ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年1月9日号[年始合併号]掲載>


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